語られない「コロナ嗅覚異常」本当のおそろしさ

一生回復しないことの影響はあまりに甚大だ

フェイスブックで活動する、ある支援グループに参加する新型コロナ患者9000人の経験をイギリスの研究者チームが調査したところ、多くのメンバーが食事の楽しみだけでなく、社交の楽しみも失ったと述べていた。そのせいで他者との絆が弱まり、孤立感が高まり、現実から切り離されたとすら感じるようになったという。

「公衆衛生の観点からすれば、極めて重大な問題だ」とダッタ氏。「全世界の新型コロナ感染者数を考えれば、嗅覚の消失が長引く人の割合がたとえ10%だったとしても、その人数は数百万人に達する可能性がある」。

栄養失調や体重減少の懸念も

中でも栄養摂取には直接的な影響が及ぶとみられる。嗅覚を失った人でも、辛い、甘いといった基礎的な味はそれまでどおりに感じられる可能性はある。ただ、風味に複雑さを加えているのはにおいだ。味覚は何百という嗅覚受容体が脳に信号を送ることで成立している。

つまり、においを感じ取れなくなると、多くの人は食欲を失い、栄養失調に陥ったり、意図に反して体重が減少したりする危険性が高まる。

嗅覚は、ガス漏れなど周囲の危険を察知する主要な警報システムとしての役割も担っている。例えば、高齢者が調理中の食べ物をコンロの上に放置して火事を起こしやすいのも、加齢による嗅覚の低下が一因だ。

嗅覚がなくなるだけでも大ごとだが、新型コロナから回復した人の中には、プラスチックの焼けるにおい、アンモニア臭、排泄物のにおいといった極めて不快な幻臭に悩まされる人もいる。嗅覚錯誤と呼ばれるゆがみだ。

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