日米関係の焦点に浮上した普天間基地移設問題の行方

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 続いて2月には、沖縄県議会が自民、公明を含む全会一致で、普天間基地の県外・国外移設を求める意見書を可決した。さらに沖縄県議会は4月中旬には県外・国外移設を求める県民大会を開催することを決めている。この県民大会には自民、公明も参加することを決定し、普天間基地移設問題では初めての超党派の県民大会になる見込みだ。

先の孫崎氏は、「これまでは沖縄県民と沖縄の政治家の間では、普天間基地移設先をめぐる考えで、反対論と容認論の温度差が見られたが、今回は県内移設反対で県民と政治家が一致した」と指摘する。

辺野古陸上案が浮上

ただ、孫崎氏も鳩山首相に提案した「九州を中心にした県外移設」が政権に受け入れられるとは考えていなかった。鳩山首相の内心に「県外移設」への「想い」があったとしても、「県外移設は困難」(3月19日)という発言に変わった。実務を仕切る平野博文官房長官-岡田克也外務大臣-北澤俊美防衛大臣のラインが、「県外・国外移設」が良好な日米関係維持を前提とすると現実的でないと判断し、「県内移設」に傾いていたからだ。

ただ、従来の辺野古沖合埋め立て案は沖縄県知事の反対が予想され、事実上白紙に戻った。代わりに浮上しているのが、キャンプ・シュワブ内に滑走路を造る構想である。これなら沖縄県知事の許可も必要なく工事が可能だ。

この案は2月に下地幹郎国民新党国会対策委員長が提唱したことから一躍脚光を浴びた。下地氏は沖縄1区の選出で、地元の事情に精通している。それまでは嘉手納基地(米空軍)内の遊休地に海兵隊航空部隊を移設するという案を提唱していただけに、その変化が注目された。

下地氏はWebで考えを明らかにしているが、それによると、(1)「県外・国外移設」は理想だが、それを実現する環境にない、(2)米国は地元が不同意ならば、普天間基地を残すだろう、(3)それならば影響の小さいキャンプ・シュワブ内に滑走路を造ることが現実的である、とまとめられるだろう。

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