日米関係の焦点に浮上した普天間基地移設問題の行方
実現性に疑問の政府案
「5月までに普天間移設問題を解決したい」というのが、これまでの鳩山首相の発言だ。そのためには3月いっぱい、遅くとも4月ごろには移設候補地を絞らなければならない。これまでに政府案として、キャンプ・シュワブ陸上案を軸に、沖縄県うるま市のホワイト・ビーチ沖合の埋め立て案などが報道されている。
しかし、どちらも実現性という点では、いくつかの障害が指摘される。基地の県内移設への反対論が強い沖縄でキャンプ・シュワブ陸上案を推進することは困難だろう。あるジャーナリストは「鎮静していた基地反対闘争に論点を与える結果になり、第2の成田空港反対闘争のような事態も予想される」と語る。
またホワイト・ビーチ沖合埋め立て案は、辺野古沖より大規模な埋め立てが必要だといわれる。
このため一部には九州・沖縄の「無人島」に近い人口の少ない島に移設する案もある。たとえば、社会民主党が2月に提案した馬毛島(まげしま)(鹿児島県西之表市)だ。社会民主党は国外移設=グアム島への移設を最優先課題にしているが、次善の策として、馬毛島など人口の少ない離島への移設を提案している。馬毛島は種子島の隣にある離島で、人口も十数人程度。島のほぼ全部を一つの会社が所有しているうえ、「基地を受け入れたい」と表明している。
ただ、無人島に近いということがかえって海兵隊の移設を困難にするという見方もある。世界最強の軍隊といわれる米海兵隊。マッチョな気風の男性が多い。そうした若い男性が求める、飲食店などの息抜きのための施設を住民の少ない島で整備することは困難だろう。
いずれにせよ、鳩山首相が開けてしまったパンドラの箱を再び閉めるには、非常に大きな政治的エネルギーを必要とする。
先の孫崎氏は、「普天間基地は嘉手納基地、横田基地(どちらも米空軍)、横須賀基地(米海軍)という大型基地に比べれば、米国にとって重要性は低い基地だ。この問題を日米関係の焦点にすることは、米国の利益にもならないだろう」と指摘する。
沖縄の県民意識の覚醒を考えれば、その解決策は海兵隊航空基地をしばらく本土で受け入れ、将来的にはグアム島への全面移設を視野に入れる方向しかないのではないか。
(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2010年4月3日号)
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