商船三井の新社長に”本命”の最年少取締役・武藤専務が就任へ、
社内的な言い方をすれば、これで74年入社組も75年入社組も、社長就任の可能性は途絶えたことになる。ライバルを意識した言い方をすれば、日本郵船よりも年齢、入社年とも1歳若い社長を仰ぐことになった。
同業の川崎汽船<9107>でも4月1日より社長交代が決まっている。ただ、未曾有の大赤字を受け、本体での取締役経験のない子会社社長を社長に抜擢した川崎汽船と比べると、10年3月期の黒字確保が確実な商船三井の社長人事は、最年少とはいえ当初から本命視されていた人物を充てた「まっとう人事」といえそうだ。
商船三井の次期社長が誰になるかは、過去1年間、海運業界最大の懸案事項だったと言っていい。前任の鈴木邦雄氏が4年、前々任の生田正治氏が6年務めたが、どちらもイレギュラー。「通常は5年」というのが商船三井の慣例だからだ。
2004年就任の芦田社長は慣例どおり09年の幕引きを当初考えていたが、08年秋のリーマンショックを受けて、「もう1年だけやる」と宣言。下馬評では早くから「武藤本命説」がささやかれたが、なかなか公表されない中、「薬師寺社長説」「米谷社長説」が囁かれた挙げ句、あまりにも音沙汰がないため「芦田続投説」まで囁かれた。年明けには「青木社長説」も飛び出したが、「もう1年だけやると言っていた以上、約束は破るわけに行かなかった。続投は100%以上ありえなかった」(芦田社長)。
結局、当初から有望視されていた武藤専務が次期社長の座を射止めた。芦田社長は09年8月に「自宅でじっと考えた末、『武藤君で行こう』と」決心したという。決め手は「若さ、元気とリーダーシップ、それにマネジメント能力。社長職はきつい。若ければ若いほどいい」(芦田社長)。
海外出張から帰ってくるのを待って武藤専務に告げたのが、今年3月5日。この間、7カ月。「社長は大変なお役目だな、という思いもあったが、芦田社長から力強く『社長に指名する』と言っていただいて、間髪入れず『お引き受けします』と答えた」(武藤専務)。