「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由 看護師、病院の清掃員、保育士、教師…
確かにこの結果は、このような職業の価値全体に対して多数の人びとが抱く直感的な疑問を裏づけているように見えるし、それゆえ、それが事細かに分析されているのを見るのは愉快でもある。
しかし、著者たちは最高給取りの職業だけに焦点を絞っているために、ここでの目的のために活用するのには限界がある。おそらくリストの中で、教師は少なくとも平均値において最も賃金の低い労働者であり、研究者の多数はギリギリのところで生活している。
したがってこの結果は、賃金と有用性のあいだに負の関係性が存在することと矛盾しない。とはいえ、ピンからキリまでの領域の仕事を理解するためには、より幅広いサンプルが必要である。
シティの銀行家は稼ぐごとに社会的価値を破壊
そのように幅広いサンプルを扱った研究にわたしの知るかぎり最も近いのは、イギリスのニューエコノミクス財団のおこなった調査である。その調査では、「社会的投資収益率分析」と呼ばれる方法を用いて、3つの高収入の職業と3つの低収入の職業、合計6つの代表的な職業が検証されている。その結果を要約すれば、次のようになる。
年収約500万ポンド、1ポンドを稼ぐごとに推定7ポンドの社会的価値を破壊。
年収約50万ポンド、給与1ポンドを受け取るごとに推定11.50ポンドの社会的価値を破壊。
年収約12万5000ポンド、給与1ポンドを受け取るごとに推定11.20ポンドの社会的価値を破壊。
年収約1万3000ポンド(時給6.26ポンド)、給与1ポンドを受け取るごとに推定10ポンドの社会的価値を産出。
年収約1万2500ポンド(時給6.10ポンド)、給与1ポンドを受け取るごとに12ポンドの社会的価値を産出。
年収約1万1500ポンド、給与1ポンドを受け取るごとに推定7ポンドの社会的価値を産出。
調査者たちは、こうした計算の常として、いくぶんかは主観的であること、この研究が収入規模上でトップとボトムにのみ集中しているということを認めている。その結果、報酬の面ではおおよそ中位で、ほとんどの場合、少なくともその社会的便益がポジティブでもネガティブでもなくゼロのあたりをうろついている大多数の仕事を除外してしまっている。
それでもなお、ここでは他者のためになる労働であればあるほど、受け取る報酬がより少なくなるという一般的原則が、強力に裏づけられている。
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