人を乗せて飛行する「空飛ぶクルマ」の開発を手がける中国の億航智能(イーハン)は、自社製の有人ドローンを使った遊覧飛行ビジネスに参入する。12月20日、不動産開発大手の緑地集団の香港上場子会社と戦略提携に調印。緑地が広東省肇慶市で開発している観光リゾート内で試験運航を開始した。
「飛行ルートはリゾート敷地内の上空に限り、長さは約1キロメートル。運航開始にあたって中国空軍の許可も取得した」。イーハンのCSO(最高戦略責任者)を務める徐華翔氏は、財新記者にそうコメントした。
イーハンはこの遊覧飛行プロジェクトに有人ドローン2機を投入し、直営事業として運航にあたる。徐氏によれば、観光関連ビジネスは現段階のイーハンにとって(将来に向けた)重要な布石だという。
同社は肇慶市のほかにも広西チワン族自治区賀州市と広東省広州市南沙区で遊覧飛行のプロジェクトを進めている。イーハンは有人ドローンの量産体制をすでに整えており、次は遊覧飛行のように事業として成立する可能性がある用途開拓が課題となっているのだ。
やむにやまれぬ選択の一面も
空飛ぶクルマは次世代の移動手段として世界的な注目を集めており、スタートアップ企業から大手航空機メーカーまで200社以上が開発に参入している。長期的に見て最も期待度が高いのは、「空飛ぶタクシー」のような都市部での新たな交通手段としての用途である。
だが、空飛ぶクルマはまったく新しい移動手段だけに、飛行のルールや監督の仕組み、機体の安全性を担保するための技術規格、検査の方法、それらの裏付けとなる法令などが、世界のどの国でもまだ確立していない。要するに、本格的な商用運航の前提となる環境整備が追いついていないのが実態だ。
そんななか、イーハンが観光関連の用途開拓に力を入れるのは、一面ではやむにやまれぬ選択とも言える。
イーハンの競合企業のなかには、(人を運べる積載能力を生かして)物流用途に目を向けるところもある。峰飛航空科技(オートフライト)の創業者の田瑜氏は、12月17日に開催された業界のフォーラムで次のように述べた。
「わが社はまず離島向けの物流や救急医療などで(空飛ぶクルマの)活用を進める。それを通じて経験とノウハウを十分蓄積し、都市部の交通用途にチャレンジしたい」
(財新記者:方祖望)
※原文の配信は12月21日
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