これらの傾向について、総合内科医の加藤開一郎氏はこう分析する。
「明らかに肺炎の病因ごとの減少幅が大きく異なる。外部の病原体が原因であるウイルス性肺炎や細菌性肺炎の入院患者数は大幅に減少している。一方、免疫異常が主な原因である間質性肺炎の減少はわずかだ。また、口腔内の常在菌が起因しやすい誤嚥性肺炎も減少幅は限定的。ウイルス性肺炎と誤嚥性肺炎を除く細菌性肺炎は、発生件数そのものが大幅に減少した可能性がある」と指摘する。
一方、8月から9月に外来・入院いずれも患者数が増加に転じる中で、肺炎の入院患者数は減少したままだった。これは患者の減少が、コロナ禍の受診控えの影響よりも、肺炎発症率自体が低下している可能性を示唆している。社会状況を踏まえれば、新型コロナ感染予防策が結果的に、新型コロナ以外の気道感染(気道、呼吸器に起こる感染症)を減少させたと推測できる。
また、加藤氏は大幅に減少している細菌性肺炎に注目している。
「臨床的に興味深いのは、肺炎入院の多数を占める細菌性肺炎が半減した点だ。コロナ対策でウイルス性肺炎が減少することは予想していた。しかし、細菌性肺炎の半減は予想を上回るものだった。今後、データ解析が進み、減少した肺炎の細菌の種類が特定されれば、細菌性肺炎の予防に関する新たな知見が得られる可能性がある」
患者数は減っても医療従事者の負担は減らない
新型コロナの感染対策下で、呼吸器系疾患をはじめとして患者数が激減したことが確認された。しかし患者数が減ったからと言って、医療従事者の負担が軽減されているわけではない。
新型コロナ感染患者を受け入れている病院の一部は1病棟以上を感染対策病棟へ転換し、対応を続けている。ここにきて、重症患者も急増し、受け入れ病床がひっ迫している。
また、患者数の減少は病院経営にも直結する。クラスター(感染者集団)が発生した病院では当月の収益が通常時と比べ半減、もしくはそれ以上の減収となっているケースもあり、終わりの見えない恐怖や不安と闘いながら、経営の悪化とも向き合わなければならない。
そのような状況の中で、病院の入口で新型コロナ疑い患者と一般外来患者の動線を分けながら通常診療態勢を辛抱強く続け、それと並行して、重症患者を受け入れるなど地域に必要な医療を提供している医療機関には改めて感謝を申し上げさせていただきたい。
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