尖閣周辺の領海を侵犯する「中国海警」の正体 漢字のイメージにとらわれてはいけない

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この中国海警局なる用語は中国国内向けの中国語名称ではある。漢字をもっぱら常用している日本社会と日本語話者に対しても、この中国語の用語をそのまま日本語に転記して中国海警局が用いられている。

日本語話者にとっては、国家行政組織を想像させる「局」という語を用いることで「海上保安庁」との言葉の親和性を誘導し、「法執行機関ではあるが軍隊ではない」海上保安庁と同様な行政組織であるかのようなソフトイメージを醸し出し、属性を変えた現在においても、結果として軍隊・軍事力としての「強面」のイメージから遠ざけている。

中国の「公船」と呼ぶのは正しいか

事実、尖閣諸島周辺海域に出没する中国海警の艦船を、日本社会はいまだに「軍艦」とは呼ばずに「公船」と呼んでいる。ちなみに国際法上の「軍艦」と呼ばれる艦船は「海軍」に所属する艦船に限ったものではない。アメリカ沿岸警備隊(U.S. Coast Guard)のカッター(巡視船)も「軍艦」である。

英米語話者・社会に向けての通称は中国海警局、「武警海警部隊」のいずれも「China Coast Guard」である。英米語話者のイメージする「Coast Guard」とは、アメリカ海軍や海兵隊とともにアメリカ軍を構成するアメリカ沿岸警備隊であり、日本語話者ほどに現実と離れたイメージを抱く危険性は少ないのだろう。以前から多くの英米語話者には「China Coast Guard」である中国海警も、他国の「Coast Guard」と同様に軍事力の一部として見なされてきた。

中国海警の艦船の属性が「公船」から「軍艦」に変わったからといって、日本の法制上、日本政府の対応・対処が大きく変わることはない。しかし、洋上において中国海警の艦船と対峙する日本漁船や海上保安官、さらには報道などを通じてその状況に注目する日本語話者たる日本社会の人々における、そのイメージや警戒感はこれまでと大きく変化することになるだろう。

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