医療用ゴム手袋「調達危機」が深刻さを増すワケ 最大の生産地で工場労働者のコロナ感染拡大

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さらに、サービス業に従事するバングラデシュ人労働者の20代の男性は、同じバングラデシュからの仲間5人と共同で生活していると言い、「マレーシアで働くことは、母国よりもはるかに良い収入が得られるのでとても有難く思っています」と前置きしたうえで、「普段の生活や勤務先でも、最大限衛生管理には気を配っているつもりですし、実際に会社から命じられた新型コロナウイルスの検査を受けましたが、陰性でした。しかし、道を歩いていても、これまでは感じたことのない差別感情をふと感じ取ることがあります」と、悲しげな様子で話した。

マレーシアは、建設業、農業などいわゆる「3K現場」では地元の若者たちが働きたがらないため、外国人労働者を安い賃金で雇うケースが多く、インドネシアやバングラデシュ、ネパールなどからの外国人労働者に下支えがあって産業が成り立っている現実がある。

このような産業構造の転換を図ろうとする動きは、新型コロナウイルスの感染拡大以降、国境が閉鎖されるなどして新たな外国人労働者を容易に受け入れられなかったり、経済の悪化で失業率が増していたりすることなどを理由に自国民の雇用が奨励されるなど、加速してきた側面がある。

マレーシア政府は今年6月、コロナ感染拡大の抑制と自国民の雇用優遇を念頭に、外国人労働者の新規受け入れを年末まで凍結することを発表。しかし、産業界から大きな反発が出た経緯があり、外国人労働者に頼ってきた医療用ゴム手袋業界においても、世界的な需要が急増し続けるなかで「労働者不足」という新たな課題に直面している形だ。

AIなどイノベーション活用で産業構造の転換

そんななか、業界も手をこまぬいている訳にもいかず、新たな対策が打たれ始めている。シンガポールに拠点を置くニュース専門テレビ局、チャンネルニュースアジアなどによると、トップ・グローブは外国人労働者に頼る構造から脱するため自国のマレーシア人労働者を増やすことに取り組んでいるほか、人工知能(AI)やIoT、ロボットを活用した工場の新設などに取り組むことを明らかにしている。

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テクノロジーを産業に取り入れ、工場の製造システムの自動化を図り、生産ラインをチェックすることでコスト削減を進めるなど、外国人労働者が削減されてゆく苦境を、新たなイノベーションの促進で補完していくことを目指している。

新型コロナウイルスによるパンデミックで、今後、世界中で医療用ゴム手袋の需要はますます拡大の一途を辿ると予想されるなか、逼迫する医療向け必需品の安定的供給に向け、外国人労働者に依存していた産業構造の転換が、デジタルやAIの活用によって大きな変革を遂げようとしている。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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