医療用ゴム手袋「調達危機」が深刻さを増すワケ 最大の生産地で工場労働者のコロナ感染拡大

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そしてさらに、緊迫感を増したのが、この一報だ。

世界最大手の医療用ゴム手袋メーカー、トップ・グローブの外国人労働者寮から発生した大規模クラスターにおいて、初の死亡者が出たことが発覚。死亡したのは、ネパールから出稼ぎに来ていた29歳の労働者、トップ・グローブで警備員として働いていた男性だ。新型コロナウイルスの感染により肺炎を発症し、治療先の病院で死亡したとされ、メディアが一斉に大きく報じる事態となっている。

世界各国の医療現場からの切実な需要に応えてきた、文字通り業界トップであるトップ・グローブでは先月、マレーシア国内49カ所の工場において、5147人もの外国人労働者らが感染していることが明らかとなったばかりだ。

この大規模クラスターは、医療に欠かせない必需品の供給現場であるだけに、世界各国から懸念の声が上がってきたが、まだ29歳と若い出稼ぎの外国人労働者の死亡が発覚したことで、にわかに新たな議論を呼ぶ事態となっている。それは、国内の主要産業を外国人労働者に任せておいていいのか、さらには低賃金で雇われることの多い、いわゆる3K現場での外国人労働者の待遇は、生活面含めて適正に行われているのか、という点である。

窮屈かつ換気も悪い状態で複数人が暮らす

前回の記事でも報じたように、感染の舞台となった外国人労働者らが暮らす寮やホステルは、窮屈な空間に複数人が暮らし、衛生状況も基準に満たず、換気も悪い状態が散見されるとされ、コロナ禍でにわかにゴム手袋の需要が急増して恩恵を受けることとなっていた国内屈指の大企業のあり方に、疑問を呈する声も続々と上がり始めている。

クアラルンプールの大手金融機関で働くワンさんは、「いちばん衛生管理が守られなければならないような現場で、世界中からの大規模な需要に応じるために、雇用している数千人もの外国人労働者の管理や生活環境の保護がおろそかになっていたのなら、非常に問題だと思います。今、多くの企業が経営難で苦しんでいるなか、ゴム手袋業界はマレーシアでコロナ禍で最も躍進している業界です。莫大な利益を上げている業界で、このような状態が野放しになっていたのならば、一刻も早く改善すべきです」と、現状に懸念を抱く。

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