2021年はコロナからの「復興と後始末」の1年に ワクチン実用化も第3波どう乗り切るかが課題

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第3波では、海外以上に心配されるのが日本だ。国際的な比較で感染者数や死亡者数が少ないことから、2020年9月に発足した菅義偉政権は、首相肝煎りの「Go Toキャンペーン」政策で経済活動のアクセルを吹かし続けた。「感染防止と経済活動の両立」が各国政府の課題である中、相対的な経済パフォーマンスのよさで政権の点数を稼ごうとした感もある。

だが新型コロナの感染リスク管理では、国際比較でなく医療資源との比較が問われる。感染拡大により、対応ベッド数に対する重症者数の割合は東京で3分の2に達し、愛知や大阪でも50%を超えている。7都道府県が政府分科会の指標で最も厳しい「ステージ4」(爆発的感染拡大)を突破(2020年12月16日現在)。日本医師会の中川俊男会長は「地域医療が瀬戸際に追い込まれる状況にある」と危機感を訴える。

ワクチンが行き渡るまでにはまだ時間を要することから、まずは第3波を収束させることが必須だ。仮に重度の医療体制逼迫が起きれば、菅首相の判断の遅れに対し国民の批判が高まり、「復興」の年の出ばなに政局の混乱が起きかねない。日本特有のリスクだ。

2021年は「後始末」の始まり

2021年前半に世界でワクチン接種が進み、その効果とともに人々の心理が変わってくると、今度は次の問題が待ち受ける。「復興」と並ぶ、2021年のもう1つのキーワードは「後始末」だろう。

最大のポイントは、金融マーケットやマクロ経済運営の対応である。コロナ危機の下、世界中で戦後最大規模となる政府・中央銀行による金融大緩和や緊急支援融資、財政出動などが行われた。その結果、世界中で民間銀行預金や現金などのマネーストックは異例の膨張を見せ、日本でもバブル期以来の伸びとなっている。

これらの資金増加分は、コロナ危機が一段落したところで全部、借金返済に回れば元に戻る。だが、実際には株式などの資産バブルや消費・設備投資の過剰な再開に向かったり、一部の融資はコロナ危機で傷を負った産業での不良債権に転じたりする可能性がある。

また、ワクチン普及後に正気を取り戻した投資家が「コロナ騒乱相場」の熱狂から冷め、資金をほかの資産に移したり、主要国が「自国第一」で金融・財政政策の後始末(引き締め)に乗り出したりする展開も否定できない。いずれにしろ、その際は株式や為替などの大波乱があってもおかしくない。

2021年はこうした「基本線」に対し、米国・バイデン新政権の国際連携や対中政策、グリーン投資やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速などが絡んで複雑な状況を生み出しそうだ。

『週刊東洋経済』12月26日号(12月21日発売)の特集は「2021年大予測」です。
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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