子に「いいかげんな親」を公言するのがいい理由 「こうあるべき」という価値観から解き放とう

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例えば、思春期の子どもたちはただでさえ自分の細かなところが気になります。さらに発達に特性があった場合には、自分がだめな人間なのではないかと気にする場合が多いです。

私は息子たちに求められれば意見をしたこともありますが、最後には必ず「でも、それが正しいかどうかはわからないよ」と締めくくっていました。

どう生きるかは子どもが決めることです。自分の意見や通った道は必ずしも正しいものではないと、親自身が認識していくことは、子どもが生きていくうえでとても大切です。

いつ子どもを手放すかを逆算する

昔と違い、現代は、親が子ども同士の問題に介入する場面が増えてきています。しかし、子どもたちは友人たちとのトラブルのなかで、自然と多くの社会性を学び、「自分で解決する」という意識を持つのです。親が介入を続けていれば、「大人がいなければトラブルは解決できない」という認識の子どもに育ってしまうでしょう。

子どものやりとりを見守れないのは、親同士に「子どもを自律させよう」という上位目標の合意形成がないからです。

親は子どもにずっとついていくことはできません。お子さんが社会に出て、誰かと意見が対立したとき、親が仲裁に入ることはできるでしょうか?

社会には自分の言うことを聞いてくれない人だっていますが、そういう人たちと関係性をつくっていかなくてはいけません。親がその手助けをできるでしょうか? そんなことはできません。みなさんも気づいているはずです。親はなるべく子育てに手をかけてはいけないのです。

必要以上に手助けをしたり、障壁を取り払ったりするのではなく、子どもが自らその壁を乗り越えることができるよう、たくさんの失敗と成功を重ねる姿を見守らなければならないはずです。

『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

それは放任とは違いますし、過剰に突き放すことでもないでしょう。また、成長段階や状況によって、必要な支援の形も違いますから、子どもたちの様子を見ながら程度を見極めなくてはなりません。学校教育でも子育てでも、根本は同じです。

変化の激しい時代はもうすでに始まっています。今までの時代のように指示を待ったり、人のせいにしていたりするような余裕はありません。自分で考え、試行錯誤するような人間でなければならないのです。

甘やかして精一杯に手をかけておいて、あるとき急に「1人で生きなさい」「自律しなさい」と突き放す。これでは子どもたちが困ってしまいます。

親は、いつ子どもを手放すかを逆算して、それぞれのフェーズに合った子育てをすべきではないでしょうか。

工藤 勇一 横浜創英中学・高等学校校長

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くどう ゆういち / Yuichi Kudo

横浜創英中学・高等学校校長。1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長として宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行。2020年より現職。教育再生実行会議委員、内閣府 規制改革推進会議専門委員、経済産業省 産業構造審議会臨時委員など、公職を歴任。著書多数。

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