「AI婚活導入」を急ぐ日本政府が的外れな理由 まずは「魅力的な国・自治体」作るほうが先

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マッチングで問題になるのが、実際にカップルになり、結婚するかどうかという成婚率。そして、成婚率を左右するのが、両人の相性です。いくら容姿や収入など客観条件が優れていても、相性の悪い相手と長く結婚生活を営むというのは、さすがに躊躇してしまいます。

古くは親戚や勤務先の上司、世話好きな隣人といった関係者、あるいは結婚相談所の相談員が両人の相性を見極めていました。しかし、社会環境が大きく変わり、関係者による仲介が機能しづらくなっています。国・自治体は、こうした相性の見極めをAIに置き換えようとしているわけです。

「AI婚活」が抱える問題点

ここまで読む限り、AIで婚活を促進するというアイデアは、たいへん理に適っています。ただ、それを国・自治体が進めることに関しては、いくつか問題点があります。

まず、AIが威力を発揮するには、ビッグデータが必要です。結婚を希望する男女の性格・特徴・趣味・嗜好などのビッグデータをAIで解析することによって、人間ではなしえない効果的なマッチングを実現することができます。ところが、自治体には、住民のデータはあっても、婚活のマッチングに有用なビッグデータはありません。

AIが人間よりもとりわけ有利なのは、地理的・社会的に離れて接点・共通項のない、まったく見知らぬ男女をマッチングする場合です。自治体が、たくさん接点・共通項がある地域住民同士をマッチングする分には、AIがやっても人間がやっても、さほど大差ないでしょう(人をAIに置き換えれば、人件費削減の効果はあるかもしれませんが)。

さらに、実際に結婚という成果を実現するには、マッチングで男女を引き合わせておしまいではなく、カップルになり、結婚に至るよう、丁寧にフォローする必要があります。もちろん、自治体にはそういうフォローアップのノウハウはありません。

つまり、AIを活用して婚活支援をするのはいいことですが、自治体がそれを担うのは力不足なのです。

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