「高級食パン景気指数」が示す消費の底堅さ 「高級食パン指数」「パンゲル係数」を作ってみた

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最後に、「高級食パン」ブームとエンゲル係数との関係を確認する。エンゲル係数とは、景気と関係なく必要(基礎的)な消費項目である「食料」の消費額を全体の「消費支出」で割った比率である(いずれも家計調査ベース)。

一般に、景気が悪くなれば教養娯楽費などの選択的支出が抑制されることで、相対的に「食料」の消費率が高くなり、エンゲル係数は上昇する。実際に、16年後半から一貫して低下基調にあったエンゲル係数は、2019年10月の消費税率引き上げや20年の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて上昇している。コロナ禍による「巣ごもり消費」の影響もあるが、「消費支出」全体の落ち込みもあって、景気悪化の影響は小さくない。

「エンゲル係数」と「パンゲル係数」は違っていた

「食パン」の消費額を「消費支出」で割ったものを本稿では「パンゲル係数」と呼ぶことにするが、パンゲル係数は2018年後半以降、一貫して上昇している。つまり、「食パン」は食料品で、しかもコメに並ぶ主食でありながらも、もはや基礎的な消費ではなくなっている可能性が高い。「パンゲル係数」は前述した「高級食パン景気指数」と同様に、家計のプチ贅沢志向(≒消費マインド)を示す指標といえる。

これらを勘案すると、消費マインドを考えるうえで注意すべきは、「エンゲル係数」が上昇しつつ「パンゲル係数」は低下するという局面である。現状では「パンゲル係数」の上昇は止まっておらず、この点からも消費マインドは底堅いと評価できる。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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