日本経済が抱えていたデジタル化の遅れなどの問題点が、新型コロナウイルスの流行によって明らかになり、改善の取り組みが本格的に進められようとしている。日本の生産性の低さの一因が、このような負のレガシーの蓄積にあることは間違いない。経済が抱えるさまざまな負のレガシーは往々にして問題が生じてから対処される。コロナは禍(わざわい)ではあるが、これをチャンスだと考え、抜本的な改革を行って経済を前に進めていくべきだろう。
もっとも、前に進むことによって一段と経済が成熟することの「不安」も存在する。筆者が最も懸念するのが「国際収支の発展段階説」における6つ目(最後)のフェーズである「債権取り崩し国」へ日本がシフトすることである。
今の日本は第5段階の「成熟した債権大国」
「国際収支の発展段階説」とは、一国の経済発展に伴う貯蓄と投資のバランスの変化をサイクルとして捉えたもので、対外的な資金の流れとしての国際収支構造の変化を説明するものである。1950年代に経済学者のクローサーやキンドルバーガーによって提唱された概念だ。
トピックボードAD
有料会員限定記事
政治・経済の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら