日本が「債権取り崩し国」になる日が早まった コロナ禍による構造変化は経常黒字を減らす

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証券投資についても、金融緩和競争によって債券利子率が低下する中、これまで以上に黒字の減少傾向が続くだろう。

国内での国債の安定消化はいつまで続くか

貿易・サービス収支の赤字と第1次所得収支の黒字を合計した経常収支が赤字化すると、日本は海外の主体に資金不足を補ってもらう必要が出てくる。その際には、企業部門だけでなく日本政府のファイナンス(国債発行)も海外投資家に依存することになる。日本が名目GDP(国内総生産)の200%を上回る債務残高を抱えながら安定的に国債を発行することができている最大の要因は国内消化率の高さである。経常収支が赤字化し、国債の買い手のうち外国人投資家の割合が増えれば、国債の安定消化に対する不安も高まるだろう。

むろん、現在は日本銀行が国債を大量に買い入れることによって市場が「抑圧」された状態にある。経常収支の赤字が定着したとしても気にする状況ではない。しかし、いつかは日銀による国債の大量購入は終わりを迎える。その際には海外投資家の保有比率が意識されるだろう。新型コロナウイルスの感染拡大という事象が、グローバルなファイナンス構造の変化を通じて国債市場に与える影響を意識しておく必要がある。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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