中国鉄道メーカー、欧州進出「試験」で悪戦苦闘 受注・製造はできても「認証テスト」が難関だ

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同社はCRRCと30編成分の追加オプションを結んでおり、今後の状況によっては追加発注の可能性もある。また同社は近い将来、ドイツでの運転も計画しており、そのためにドイツ国内の電化方式に対応した新型車両を追加導入したいという意向を示している。

ただし、ヨーロッパへの参入はこれからが正念場となる。というのも、ヨーロッパで鉄道車両を運行するためには、認証テストを行わなければならない。これをパスするのは非常に難しく、ヨーロッパで多くの実績を誇る欧州系現地メーカーですら、テストにパスできず何度も納入期限を延期することがあるためだ。

テストに加えてコロナ禍が障壁に

例えばイタリアの民間高速列車イタロは、導入予定だった仏アルストム製の車両AGVの認証が遅れたため、営業開始が数年も延期されたことはよく知られている。独シーメンスは、認証の問題によってドイツ鉄道で活躍する高速列車ICE3の増備車であるVelaro(ヴェラロ) Dの納期が大幅に遅れ、「お詫び」として1編成を無償提供することになった。

納期遅れの補償で、メーカーのシーメンスが追加の1編成を無償で提供することになったドイツ鉄道の高速列車ICE3の増備車「Velaro D」(筆者撮影)
シュコダが製造したドイツ鉄道向け近郊型客車と機関車。ドイツ鉄道にとってシュコダ製車両の導入は東独時代の180型電気機関車以来約30年ぶりだったが、出だしからつまずいてしまった(筆者撮影)

また、2016年から営業を開始する予定だったチェコ・シュコダ製のドイツ鉄道新型近郊列車用客車と電気機関車は、同じく長期間にわたって認証テストをパスできなかったために、2020年12月に4年遅れでようやく営業開始されることになった。

ヨーロッパでまったく実績がなく、文字通りゼロからのスタートとなるCRRCは、まずこの認証テストをきちんとパスしなくてはならない。ドイツで陸揚げされた後にすぐチェコへ送り込まれたのは、チェコの会社へ納入されるからというのも理由ではあるが、この認証テストを行うため、同国のヴェリムにある鉄道総合試験場へ向かうためだった。

ところが、いざテストを始めるという段階で問題が発生した。新型コロナウイルスの世界的な大流行である。3月中旬以降、ヨーロッパ各国は国境封鎖などの制限措置を実施したが、とりわけ中国に関してはこのウイルスの発生源と疑われることから長期にわたって入国が制限され、今も中国の技術者はチェコへの入国ができない。

また、発注した3編成のうち最後の1編成は、発送許可が下りないため、出荷できずに中国国内で待たされている状態だ。

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