抽選倍率13.7倍「東京駅前の公立小学校」の実態 八重洲・京橋地区はオフィス街で子供も少ない

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入学希望者の多い小学校は、いずれも教育内容に特色がある。日本銀行本店近くにある常盤小は「国際教育パイロット校」として、英語の授業を低学年は週2コマ、3年生からは週3コマ実施。毎日5分間、全校一斉に英語に親しむ「クイックタイム」を設けている。日本橋兜町の阪本小は、東京証券取引所からすぐという場所柄、「金融教育」が盛ん。2018年にアルマーニの制服を採用したことで話題となった銀座の伝統校・泰明小も、画廊巡りや「柳染め」の課外授業など、いずれも保護者の満足度は高く、人気は健在だ。

保護者の意思のみが強く働く「小学校選び」

特認校制度とは、公教育の質の向上を目指して2000年代前半から広まった「学校選択制」のひとつである。地域のニーズを踏まえた「選ばれる学校づくり」という点で、中央区の取り組みは成功しているようにみえる。都内の学校選択制の実情に詳しい教育ジャーナリストの小林哲夫さんは、「いじめや不登校への対応の不手際で、公教育に対する信頼が揺らぐなか、保護者が学校を選べる制度があるのはよいこと」としたうえで、保護者の意思のみが強く働く「小学校選び」に警鐘を鳴らす。

「豊かな教育内容や、『中学受験に有利な環境か』という視点に加えて、あえて通学時間のかかる学区外の小学校を選ぶ動機の根底には、『特定の階層がいる学校に子どもを通わせたくない』という他者排除の論理も見え隠れします。地域社会に根差し、さまざまなバックグラウンドの子どもが共存する環境で学べるのが、公立小の本来の魅力。『授業中に子どもが騒いで先生が苦労している』『家庭に問題がある子が多い』など、同じマンションのママ友の噂だけで地元の小学校を避けるケースもみられます」(小林さん)

選んだ小学校が子どもに合わなかった場合にも備えたい。

「本来行くはずだった地元の小学校に戻るのは難しいかもしれません。子どもが行き場を失うことがないよう、保護者、学校、行政は子どもの視点を忘れてはならないでしょう」(同)

少しでもいい教育環境を求めるのが親心だが、わが子をしっかり見つめ、正しい選択をしたい。

(文/アエラムック編集部・曽根牧子)

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