「交渉力、瞬発力、ジジ殺し力」より大事なこと 「起業の兄貴」としてのVCとのいい関係の作り方

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なかでも、ベンチャー企業の経営者には、是非、本書を座右に置いていただきたい。本書の副題のとおり、本書の第1の名宛人は起業家である。

ベンチャー経営者にとってベンチャー・キャピタルと良好な関係を築くことは必要不可欠である。出資による資金提供だけでなく、経営助言をはじめとする成長支援の役割も担う、起業家にとっての兄貴分的な存在、それがベンチャー・キャピタルだ。会社の成長、そして上場という(中間)ゴールを目指し、経営者と伴走する存在である。

べンチャー・ファイナンスというゲームを制すには

ベンチャー・キャピタルと良好な関係を築くためには、起業家には、事業計画をセクシーに仕立てる能力も、強気な交渉力も、devil’s advocate(あえて反対意見を言ってくる人)を切り抜ける大喜利的瞬発力も、ジジ殺しの能力も求められる。しかし、何より重要なことは「ルールを知ること」だ。

これはベンチャー・ファイナンスに限ったことではないが、「ルールを知る者は、ゲームを制す」が法律家としての私の持論だ。スポーツもギャンブルもビジネスもみな同じ。より有利な立場に立ちたいなら、まずルールを知り尽くすことから始めなければならない。

2020年11月、公正取引委員会が「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」を公表した。出資者である大企業やベンチャー・キャピタルが、出資先であるベンチャー企業に対して不当な要求を押しつけている例があると指摘する。

これは、ベンチャー企業側がベンチャー・ファイナンスのルールを熟知していないことからくる、“情報の非対称性”を背景とした問題である。ベンチャー企業側も、ベンチャー・ファイナンスというゲームを制したいなら、まず、そのルールを知ることから始めなければならない。

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