「交渉力、瞬発力、ジジ殺し力」より大事なこと 「起業の兄貴」としてのVCとのいい関係の作り方
スタンフォード大学でJD(Juris Doctor)を取得し、法律家の肩書も持ちながら、これまでビジネスと投資の世界を中心にキャリアを形成してきた著者に、私は、一方的に親近感も覚える。
生態系に血液を送り込むポンプ役
さて、「VCの教科書」は、誰にとっての教科書なのか。
VUCAなる言葉が用いられるようになって久しい。
元は軍事用語で、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものであるが、2010年頃からビジネスのさまざまな場面で用いられるようになった。われわれの社会生活から予測可能性が失われつつあることが意識され始めた。とどめを刺したのがCOVID-19だ。1年先どころか3カ月先の状況も予測できない。
このような状況下では“非接触”や“テレワーク”といった新たに生み出される目の前のニーズに素早く対応する機動性と柔軟性が求められる。その大きな一翼を担うのがベンチャーだ。ベンチャー・ビジネスに期待される役割は大きく、ベンチャーと社会生活との接点はますます広がっている。
事業にとって資金は血液だ。ベンチャーの生態系すみずみにわたり血液を送り込むポンプ役、それがベンチャー・キャピタルである。銀行も運転資金を融資の形で提供するが、ベンチャー・キャピタルはより大きな成長資金を出資の形で提供する点で、それぞれの役割は異なる。
『VCの教科書』はベンチャー・キャピタリストを目指す者だけの教科書ではない。ベンチャー・ビジネスのステークホルダーは多種多様である。
ベンチャーの起業家その他役職員、オープンイノベーションの枠組みで戦略的関係構築を目指す事業会社、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や投資担当者、これらの活動を支援する弁護士その他アドバイザー、将来的にこれらのポジションを目指す学生や転職希望者、これらベンチャー・ファイナンスに関わるすべての方々にとって本書は教科書となる。
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