「充実野菜」「ルーツ」を作った男の"成功法則" 伝説のマーケッターは、なぜヒットを出せるのか?

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 これだけ景気がよくなってきても、ヒット商品を生み出すのは至難の技。まして、毎年大量の新製品が世に送り出される飲料の世界では、「当たり外れ」はもはや神のみぞ知る、と言っても過言でないかもしれない。
 ところが、野菜ジュース『充実野菜』など、誰もが知るヒット商品をいくつも世に送り出してきたマーケッターがいる。伊藤園、日本・コカコーラ、JTなどで商品開発を手掛けてきた山本康博氏だ。
 山本氏によると、ヒット商品を生み出すためには”6つの鉄則”があるという。

伊藤園の「充実野菜」、JTの缶コーヒー「ルーツ」、日本コカ・コーラの「リアルゴールド」(缶)……。これらを1度は飲んだことがある人は多いのではないでしょうか。

飲料の商品開発は、100にひとつヒットが出るか否かの世界です。あれこれ考えて作ってみても、何がヒットするかは「時の運」と言いたくなるほど、読みにくいのです。ひたすら考え抜いてもヒットが出ない、そんなときにいったいどうするかは、飲料の商品企画に携わる人間の永遠の課題でもあります。

ところが幸いにも、私は先ほど挙げたヒット商品の開発に恵まれました。なぜか? 振り返ってみると、失敗の数が誰よりも多いのです。その数、マーケッター歴28年で、ざっと100以上。

「そんなに失敗があるのに、なぜ業界で生き残れたのですか?」と言われれば、それは、大ヒット作にも恵まれてきたからです。おかげさまで会社員生活を辞め、独立した現在でも、幅広い業種で新商品・新サービス企画の立ち上げに、多方から声をかけていただいています。

ヒット商品の陰には山のような失敗があるものです。でもいちばん重要なのは、失敗を成功の糧として役立てること。失敗こそ、次のヒットを見つけ出したり、よい仕事をするための重要なヒントになります。

ヒットを作るための、「6つの鉄則」

さて、膨大な数の失敗をする中で、私は「6つの鉄則」に気づきました。

【鉄則01】 お客様調査より、「お助けモード思考」

「お客様が欲しいものはお客様に聞けばいい!」とばかりに大規模な調査を実施して、CMやキャンペーンも大々的に行ったのに、大失敗したことが何度かあります。調査を徹底して「大丈夫、絶対成功する!」というデータが出たのに、発売しても全然売れない。

「あれっ?」と思って再調査をしてみると、調査手法は同じなのに前回とまったく異なる「売れない」データが出てくるのです。おかしいですよね。1カ月前には「買いたい!」と答えていた消費者が、発売したら「買いたくない」と……。つまり、押し売り的な調査やキャンペーンだったのです。

次ページそれって、単なる現場の都合では?
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