ユニクロ最年少役員だった男が悟った「登る山」 人の声に耳を傾け心に火をつける「トーチング」

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別の日は、ある大学付属の高校に通う男子生徒から相談を受けた。最近興味を持った英語を徹底的に学びたいという男子生徒は、このまま付属の大学に進学するか、海外の大学に留学するか迷っていた。

神保さんは、男子生徒が英語を勉強したいということと、海外の大学か内部進学か、どの国に行けばいいかなど複数の悩みを同時多発的に悩んでいるとして、悩みに優先順位をつけて一つ一つ解決する方法を勧めた。

自他ともに認める「人たらし」。打ち合わせでもいつの間にか相談タイムに(筆者撮影)

「一生懸命考え抜いたアイデアが相手に伝わらなかったとき」「ワークかライフか、そのバランスに悩んだとき」など、これまで神保さんが受けた相談は多岐にわたる。トーチリレーのSNSには「友人や親族のような距離感と熱量で接してくれた」「前より肩の力を抜いて物事に取り組めるようになった」などの相談者からの感想が寄せられている。

相談相手を渇望したメガバンク時代

神保さんはどういう人なのだろうか。神奈川県横須賀市出身。中央大学経済学部を卒業後、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行した。すぐに学歴コンプレックスに陥った。東京大学や一橋大学卒の同期と比べて、自分を卑下していたという。

配属先の法人部門では数億円規模の融資案件を扱い、プレッシャーを感じていた。仕事について上司に相談したくても、気軽に質問しにくい雰囲気が流れていた。神保さんは自信を失い、軽いうつ状態に陥ったという。

打開策を見つけられないまま1年がたち、新入社員が入ってきた。自分と同じ思いをしてほしくないと神保さんは「相談しやすい兄貴キャラ」を買って出る。「なんでも聞いてくれ、と言ったら後輩たちの質問レベルが高すぎた。見栄を張って簡単な質問にだけその場で答え、家に帰って金融の専門書を読んで必死で調べた」という。睡眠不足で充血した目を目薬でごまかしながら、早朝のファミレスで数時間かけて後輩に教える予行練習までした。

毎日のように後輩からの質問や相談に乗っているうちに、神保さんはあることに気がつく。「人に教えることを前提にすると、完全に理解するまでインプットするし、わかりやすく説明するためにアウトプットも工夫する。相談に乗ることは相手が喜ぶだけではなく、自分も成長できる大きな意味があることだ」と。以来、職場でもプライベートでも人の相談に乗ることが神保さんのライフワークになった。アウトプットを前提にしたインプットをすることで実力もつき、頭取表彰も受けた。

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