ユニクロ最年少役員だった男が悟った「登る山」 人の声に耳を傾け心に火をつける「トーチング」

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神保さんは東京三菱銀行に5年間勤めたのち、コンサルティング会社で企業再生などを手掛ける。そして2010年10月にファーストリテイリングに入社した。同社が「ユニクロ」の海外への出店を加速させていたときだ。

憧れの経営者だった柳井正会長兼社長と最終面接でのやり取りは、柳井氏のオーラに圧倒されて覚えていない。ただ一言、「あなたは人に強そうですね」と言葉をかけてもらったことは今も心に残っている。

本人や周囲の予想に反して、最初の配属先は人事部。神保さんは新卒採用の担当になり、店舗へのヒアリングを重ねてファーストリテイリングという会社への理解を深めていく。ユニクロが東南アジア各国に1号店を出すときには現地採用にも携わった。

現場の人々の士気から作り上げたファストリの物流

2016年、執行役員に就任し物流の一大改革を任される。当時、ファーストリテイリングは物流に大きな問題を抱えていた。中国や東南アジアなど海外の工場で大量生産されたヒートテックのような季節性の高い商品が、店頭に並ぶ数カ月も前から日本の倉庫を埋めつくし、無駄なコストが発生していた。

出荷機能がない倉庫にまで在庫があふれ、ECの出荷遅れにもつながっていた。このため、生産と販売をつなぐ物流部の雰囲気は決して明るいものではなかったという。

「就任当初、物流についてはまったくと言っていいほど詳しくなかったが、人の心はよく理解していた」。物流部で働いている数百人のメンバーについて誰よりも詳しくなろうと、切り込んでいく。多くのメンバーと面談を重ねるうちに一人一人は非常に優秀なのに、あらゆることを物流部の問題にされ意気消沈している人が多いことに気がついた。

神保さんは物流部の現場の意見をまとめ、柳井社長にダイレクトに改善点を提案していった。さまざまな課題が目に見えて変わっていくと、現場の士気も上がっていきメンバーの心に火が燃えたぎり始めた。そして2018年10月、ファーストリテイリングは物流機械大手のダイフクとパートナーシップを組んで倉庫の全自動化を発表し、大きな注目を集めた。

神保さんは「当時、メディアでは私が物流改革をリードしたと言われたが、私は働く人の心に火をつけただけ」と語る。同年、37歳の若さで上席執行役員に就いた。よりいっそう多忙になってからも毎週金曜の午後は、社員の相談を受ける時間を確保した。

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