桐生は世界リレー選手権(5月25日)の4×100mリレーで3走を務めて、チーム・ジャパンの5位入賞に貢献。今年は上昇カーブを経て、日本選手権に乗り込むことになる。話題先行だった前回とは違い、今の桐生には“リアリティ”がある。今回は「9秒台」を期待してもいいだけの「実力」がつき、同時に期待できるだけの「条件」も整いそうだからだ。
気象条件が好タイムを後押しするか
陸上競技のスプリント種目は、“環境”が記録に大きく影響するが、日本選手権の舞台となる、とうほう・みんなのスタジアム(福島県営あづま陸上競技場)は今年3月に改修工事を終えて、生まれ変わった。トラックの硬度が公認上限の「硬さ」で施工されており、桐生が10秒01をマークした広島ビッグアーチと同じ。反発が高く、スプリント種目にとっては「高速トラック」になる。
しかも「全力」を注ぐことができる決勝は8日の17時50分。過去10年間の観測で6月上旬の午後は、ゴール方向へ1~2mの風が吹いているというデータもある。
あくまでも筆者の感覚だが、桐生が日本選手権で9秒台に突入する確率は「20%」くらいあるのではないかと見ている。ちなみに昨年の日本選手権は「1%未満」だと思っていた。
実際、桐生にとって初めての日本選手権となった昨年は、10秒25(+0.7)で2位。10秒11で優勝した山縣亮太(慶大)に完敗した。天気予報で雨の確率が20%では、傘を持参する人は少ないが、桐生を最も取材している陸上競技専門誌の某編集者は、「晴れ、追い風の条件がそろえば、9秒台の可能性は50%くらいあると思います」と話す。昨年と比べると、“夢の記録”に突入する可能性はすこぶる高い。
1年前の大騒動を考えると、メディアの注目度は少し落ち着き、桐生もマスコミ慣れをして、昨年度のような「重苦しさ」は感じていない様子だ。19歳以下のカテゴリーであるジュニア世界記録は10秒01。昨年の織田記念で桐生はこのタイムに並んだものの、国際陸連が定める風向風速計を使用していなかったため、「ジュニア世界記録」に公認されなかった。
ジュニア世界記録か、日本人初の9秒台か。男子100m決勝が行われる6月8日は、日本のスポーツ界にとって、“特別な1日”になるかもしれない。
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