立地、商圏に国籍。複雑な要素を見極める
逆に、成功するための要素も一概には言えない。しかし同氏が考える必要条件は、まず立地のよさ。国の商圏は時とともに変化するため、それをうまくとらえることも求められる。続いて、大きさ。日本にも増してあらゆる国籍や文化を持つ客のライフスタイルに対応するため、店の数とバリエーションが求められるからだ。
そのうえで、タカシマヤ・シンガポールがこれまでの20年余を生き残ってきた理由のうち特筆すべきものとして、「日本で培ったノウハウの活用」があるという。
ひとつは、「催事の企画」。たとえば、開業当時は芸子さんを呼んで「京都フェア」を実施したそうだが、これが現地の客に大きなインパクトを与えたそうだ。最近では、北海道の名産を集めた「北海道フェア」がよくにぎわう。シンガポールで北海道は旅行先としても人気で、このフェアはおなじみのものとして定着している。
もうひとつは、「売り場作り」。「日本に限らず百貨店はその看板を取り替えると、それがどの百貨店なのかわからないほど均質化している」(吉野氏)が、タカシマヤ・シンガポールではあえて昭和40年から50年代の頃のいわゆる典型的な百貨店の雰囲気を残して、欧米的な店との差別化を図っている。
たとえば、1階の目立つ場所には高級ブランドの店は置かず、さらに化粧品売り場は1階にはあるものの、奥に持っていっている。「高級ブランドはいい場所に店を構えたがるし、化粧品は原価率が低いため儲かる。しかし、あくまでマジョリティのターゲット客は一般のお客様なので、そこは譲らない。そうしたところに近隣諸国の百貨店とは異なる、独特の雰囲気を感じてもらえているのかもしれない」(同氏)と話す。
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