三越伊勢丹、JR西日本の暗中模索 不振の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」を衣替え
当初の目標を大きく下回り、抜本的な売り場改革が不可避と考えられていた「JR大阪三越伊勢丹」(以下、大阪店)に、新たな手が打たれる。その方針は、百貨店売場を6割減らし、隣接するJR西日本系のファッションビル「ルクア」と一体運営するというもの。今夏からの改装で、事実上、専門店ビルに衣替えする。
大阪店が開業したのは2011年5月。西日本旅客鉄道(JR西日本)が6割、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が4割を出資するジェイアール西日本伊勢丹が運営している。同社は、大阪店と「ジェイアール京都伊勢丹」の2店を持つ。開業当初、大阪店の目標は年商540億円だったが、販売が振るわず2013年3月期は300億円強にとどまる。
運営会社は約100億円の債務超過
大阪店の開業初年度である12年3月期、運営会社のジェイアール西日本伊勢丹は63億円の営業赤字(11年3月期は4.4億円の黒字)だった。翌13年3月期も営業赤字40億円に加え、大阪店の店舗減損損失を中心とする特別損失198億円が響き、242億円の最終赤字を計上。この大赤字で同社は99億円の債務超過に転落している。
業績悪化は出資母体にも響く。三越伊勢丹HDの13年3月期連結決算では、58億円の持分法投資損失が出ている。三越伊勢丹HDの単独決算では、ジェイアール西日本伊勢丹の株式評価損を計上し、簿価をゼロにした(12年3月期の簿価は80億円)。
一方、JR西日本も13年3月期に大阪店の建物など減損損失188億円を計上。大阪店の簿価は13年3月末の267億円から13年3月末で64億円に急減している。
大阪店の苦境については、三越伊勢丹HDの杉江俊彦常務が昨年11月の中間決算で、「隣接するグランフロントの開業(13年4月)で人の流れが変わり、売り上げが改善すると見ていたが、厳しい状況が続いている」と説明していた。
また、「年商540億円を前提とした店舗なので過大装備となっており、人員も含めて経費削減を進めている。赤字額はかなり減っており、14年3月期の営業利益は何とかゼロに近づけたい」(杉江常務)と、なお予断を許さぬ状況であることも隠さなかった。
地域4番店ゆえの厳しさ
苦戦の理由は、梅田地区では最後発の出店で、開業当初から阪急、阪神、大丸に続く地域4番店だったことが大きい。当然ながら、百貨店の購買客に訴求力のある高級ブランドショップは地域1番店に集まりやすい。同じブランドが2番店に出店する場合も、新商品で品揃えを変えるケースも散見される。
エルメス、グッチ、カルティエ、プラダ、シャネル、ティファニー。こうした高級ブランドは梅田1番店の阪急百貨店に大挙して入居しているが、三越伊勢丹には一部の宝飾・時計売り場を除いて、まったく入居していない。
大阪店が開業する直前の11年4月に大丸梅田店が増床開業し、この3階部分にプラダやグッチなど高級ブランドが入った影響もあったようだ。大阪圏の消費者は東京圏以上にブランド志向が強いとされ、アベノミクスによる株高で火がついた高額品消費の波にも乗り切れなかった。
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