三越伊勢丹、JR西日本の暗中模索 不振の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」を衣替え

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三越と伊勢丹の”折衷”

もっとも、梅田地区は全国有数の競合エリアだ。地域1番店の阪急梅田本店ですら、改装開業前の売上計画に届いていない。

こうした中、阪急では高価格帯に加え、値ごろ感のある商品にも手を広げた。一方、JR大阪三越伊勢丹は合弁会社での運営という性格もあり、環境が厳しい中で品揃えやショップの機動的な改編が出来なかった。大阪店では「イセタンガール」など得意の自主編集・企画売り場を当初、売場面積の3割程度で展開した。しかし、思うような集客にはつながらず、売場の閑散とした様子に、地元関係者からは「見ていて可哀想」との声も出る。

11年2月に開いた大阪店の説明会(撮影:ヒラオカスタジオ)

08年の経営統合で誕生した三越伊勢丹HDが展開する百貨店の中で、「三越伊勢丹」と冠した店舗は全国でもこの大阪店だけだ。

業界関係者は大阪店について、「旧伊勢丹テイストのある尖ったイメージがあるのは、イセタンガールと3階のセレクトショップの『リ・スタイル』、8階、9階のメンズ、紳士服ぐらい。逆に5から7階の婦人服やリビングは普通の品揃えで、銀座三越のよう」と評する。

言い換えれば、MD(品揃えや商品開発)は、シニア路線の旧三越サイドと若者層向けの旧伊勢丹サイドの”折衷”となり、店舗全体としてのターゲットやコンセプトが消費者に伝わりづらかったともいえる。

専門店ビル化という選択肢

三越伊勢丹HDの大西洋社長はこれまで、「(地方店では)大阪が一番の課題。15年度をメドに黒字化したい。JR西日本とも情報を共有化し、計画を練っている」と話してきたが、出てきたのは専門店ビル化。当初から想定された範囲内の施策で、意外感はなかった。

これまでの取材で大西社長は、「伊勢丹新宿店で評価されているMDを大阪に持って行くことも考えている。従来は中途半端だった。新宿でしか、伊勢丹でしかできない物を視野に入れるべきかもしれない」と述べていた。だが、高級ブランドが入らず、自主売り場の訴求力がなければ、詰まるところ選択肢は専門店ビル化しかなかったといえる。

専門店化に当たって、ルクアを運営するJR西日本SC開発が全館を運営し、百貨店は核テナントになる計画だ。全体の施設名や核テナントとなる百貨店の名称は未定だが、「三越伊勢丹」の冠が外される可能性が高い。いわば事実上の撤退だ。

三越伊勢丹HDは「脱百貨店路線」を進めるJ.フロント リテイリングと異なり、テナント導入・運営のノウハウ蓄積があるわけではない。むしろ、「ルクア」を展開するJR西日本は貸しビル業者として一日の長がある。業界関係者は「ルクアのMDは非常に精緻。今後、専門店化を本格的に進めれば、脅威になるかもしれない」と警戒感を示す。

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