「クラウン」SUV化、4ドアセダン終焉の可能性 自動車の基本形、セダンの成り立ちと未来予想

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SUVの基になったのは、悪路走破性を最大の目的とした4輪駆動車だ。アメリカのジープ、英国のランドローバー、ドイツのメルセデス「ベンツGクラス(元はゲレンデヴァーゲンといった)」などだ。ただし、それらは当時まだSUVとは呼ばれていない。

国内では、トヨタ「ランドクルーザー」、日産「サファリ」、三菱「ジープ」などがあり、そののちにいすゞ「ビッグホーン」や三菱「パジェロ」が登場し、この2台をRV(レクリエーショナル・ヴィークル)と呼んで、悪路走破性のみならず舗装路でも快適に走行できるクルマとして80~90年代にかけて人気を集めた。

カムリをベースに誕生したSUV「ハリアー」

そのころ、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスのビバリーヒルズあたりで、英国のレンジローバーを日常に使う富裕層が現れ、そこからトヨタが「ハリアー」を誕生させた。ここからSUV人気がはじまる。ハリアーは4ドアセダンの「カムリ」を基に、4輪駆動車風の車体を載せた新しい価値の提供であり、日常の快適性を優先したクルマである。

4ドアセダンのカムリをベースに、スポーツ ユーリティティ サルーンという新ジャンルに挑戦した初代ハリアー(写真:トヨタ自動車)

ミニバンの流行も、SUVの人気も、いずれも4ドアセダンの走行性能や快適さが基になっている。ゼロから生み出された選択肢ではない。

なおかつ、トヨタの近年の例では、プリウスからC-HRが生まれ、カムリからRAV4やハリアーが生まれ、そしてヤリスからヤリスクロスが生まれている。必ずしも4ドアセダンばかりではないが、一般的な乗用車を基にしていることは事実だ。

さらにトヨタの場合、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれる共通の開発概念により、効率的に性能や機能を高める開発を土台とし、基になる車種で基本性能を十分に作り込んだうえで、商品企画に応じた車種構成を実現することをはじめている。これによって、基本性能はでき上がっているのだから、それぞれの車種に応じた個別を磨き上げる開発に集中し、魅力あるSUV群を生み出している。

ダイハツとの共同開発によるライズも、ダイハツのDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)により、ダイハツが得意とする軽自動車の基本性能を十分に高めたうえで、それを登録車のコンパクトカーへ拡大採用する方法によってロッキー/ライズは開発されている。

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