コロナ後遺症で「歯が抜ける」という衝撃の実態 専門家を驚かす意外な影響がまたしても

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血も出ずに歯が抜けるのは普通ではない、歯茎の血管に何か問題が起こっていた可能性を示唆している、と血管新生財団のリー氏は指摘する。

コロナは全身に存在するACE2タンパク質に結合し、体をむしばむ。ACE2タンパク質は肺だけでなく、神経や内皮細胞にも発現するため、歯を生かしている血管がウイルスによって障害をきたした可能性がある、とリー氏は言う。これなら、痛みを感じることなく歯が抜けたという患者の説明ともつじつまが合う。

想定外の影響に警戒が必要

サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応が口の中に現れた可能性も考えられる。

「コロナの後遺症が口内に現れたのなら、それはウイルスに対する防御機構のせいだ」と、欠落した歯を人工物で補う補綴(ほてつ)歯科の専門医、マイケル・シェーラー医師は話す。同医師によれば、循環器疾患や糖尿病などの炎症性疾患も歯周病と関係がある。「歯周病は過炎症反応にとても敏感だ。コロナの症状に長期間苦しんだ人は、間違いなくそのカテゴリーに入る」と、シェーラー氏。

歯科医はまだ、こうした症状を多くは目にしておらず、患者の個人的な説明に取り合わないこともある。ただ、リー氏をはじめとする医師は、コロナでは驚くような症状が出ることがあるため、想定外の影響に警戒しなければならないと話す。

「患者は新たな発見をもたらしてくれているのかもしれない」。リー氏は、医師や歯科医は、コロナが歯に与える長期的な影響を解明するために協力する必要があると言う。

ケミリさんは、自身の経験を教訓として役立ててもらいたいと考えている。コロナ対策をしっかりと行い、自らを守らなければ、「自分と同じような目に遭ってもおかしくない」という教訓だ。

(執筆:Wudan Yan記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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