「学術書」を読めようになると読書が変わる理由 「難しい本」と敬遠していてはもったいない

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学術書を難しい本と敬遠するのではなく、「難しい本」=「噛み応えのある本」と考えると、少しは抵抗感がなくなりそうだ(写真:Graphs/PIXTA)
震災後の復興、コロナ後の社会、最先端医療の先の人の命の扱い方。現代が抱える問題はどれ一つ単一分野では解決できない。専門の知を超え社会全体で考えるため、専門外の世界を知る、学ぶことの大切さを著者は説く。とはいえ、一般読者にはハードルが高く敬遠しがちなのが学術書だ。『学術書を読む』を書いた京都大学学術出版会に専務理事・編集長の鈴木哲也氏に学術書との付き合い方について聞いた。

「難しい本」=「噛み応えのある本」

──ここでいう学術書とは?

学術的な訓練を受けた人間が、学術的な関心から物事を論じているもの。引用元やエビデンスを明らかにし、学術的な作法にのっとっていれば、新書だって学術書としていいと思います。歴史的な認識、事実の経緯、さまざまな先行研究を引用しその問題を指摘しながら、自分の議論をするのが学術の作法。

決して自分が絶対ではなく、対立する見方があるのを自覚する。相手の論理を知ったうえで、「こんな議論もあるよ」と公平に紹介し、そのうえで自分の話を聞いてもらいたい。そういう姿勢がなければ、たとえ著者が学者であっても学術書とはいえないと考えます。

──学術書=難解なイメージです。

学術書と呼ばれるものの多くは、耳慣れない専門用語やデータ・図表で埋め尽くされていて、基礎知識がない読者には読みにくいのは確かです。たまにペダンティック(衒学(げんがく)的)な“悪文”でわざわざ難しいフリをした本もあります。

でも粘り強く、わからない箇所はネットで調べながら、ぜひ読み進めてほしい。まったく理解不能でお手上げ、ということにはならないはずです。難しい本=噛み応えのある本と考えてはどうでしょう。スポーツ同様、知の力も負荷のかかるトレーニングで養われます。

──情報を手軽に、効率的に得られる作りの本が人気の主流ですが。

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