危機打開なるか、欧州「ライバル鉄道」が共闘 コロナ禍で経営悪化、「線路使用料」減免求め

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この提案は、7月16日に欧州議会で取り上げられ、10月2日に理事会によって正式に承認された。規制は2020年12月31日を1つの区切りとしているが、欧州委員会はその時の状況次第で期間を延長させるか否か判断する権限を与えられている。現在のヨーロッパ各国における感染状況を鑑みた場合、この延長は避けられないと見るのが自然と言えよう。

チェコの民間運行会社レギオジェット。資金は十分にあり、コロナ感染拡大後も積極投資を続けるが、はたしてそれは吉と出るか(筆者撮影)

鉄道会社の列車運行に関わる経費の中で、線路使用料はかなりの割合を占める。空港における着陸料のようなもので、乗客からの運賃・料金でその使用料を賄わなければならない。前出のチェコ鉄道局が昨年1年間で運行各社から得た線路使用料は、合計36億7900万コルナ(約174億8000万円)に達する。

鉄道局全体の予算の中では、その収入は小さいほうだと言われているが、経営規模の小さな民間企業の運行コストからすれば大きな金額となる。当然、乗客が少なければ線路使用料を負担するだけの十分な収入を得られないことになり、経営は立ちゆかなくなる。

こういった事態はコロナとは関係なく実際に起きている。ヨーロッパ各国の鉄道が民営化および上下分離された際、鉄道会社にとって線路使用料が大きな負担となり、地方都市への列車本数が大幅に削減されたり、編成が短くなったりした地域は多い。

政府による支援の方法はさまざま

2020年3月、ヨーロッパ各国をコロナの第1波が襲った時、経営体力が弱い民間企業の一部は廃業の危機に陥った。今回の要望に名を連ねた3社の1つであるレオエクスプレスは、経営難からチェコ鉄道による買収まで報じられた。同社はドイツ国内の列車運行も担っていたことから、それらも含めて廃止される可能性があった。

各国の鉄道インフラ保有企業は、線路や信号、駅などを一括管理する。その多くは国営もしくは政府全額出資だ(筆者撮影)

同社はコロナ感染拡大が一段落したことでどうにか事なきを得たが、第2波によって再び乗客が激減すれば、今度こそ息の根を止められる可能性は否定できない。

政府からの資金援助も当然必要だろうが、現時点で一番手っ取り早い解決方法は、まず流出する経費を減らす、すなわちインフラ使用料の削減が最も有効な手段となるわけだ。

鉄道利用者数の落ち込みにより、経営に大きな影響を受けたヨーロッパ各国の鉄道会社は政府に対し何らかの支援を要請しているが、その方法はさまざまだ。

6月2日付記事「ドイツ鉄道優遇の『緊急支援』、民間他社が反発」で簡単に説明したが、例えばドイツではナショナルキャリアであるドイツ鉄道に対し、政府が多額の支援金を用意すると表明、その額は110~135億ユーロに達するとされた。だが、同国内ではほかにも多数の民間企業が鉄道運営に関わっていることから、今は1民間企業となったドイツ鉄道だけに多額の支援をすることは平等とは言えないと批判された。

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