危機打開なるか、欧州「ライバル鉄道」が共闘 コロナ禍で経営悪化、「線路使用料」減免求め
その場合、どの企業に対しても平等に支援できる1つの方法が、国が保有する鉄道インフラの使用料減免となる。官民かどうか、旅客か貨物かも問わずすべての線路使用者に対して同様の措置となるので、完全に平等が保てる。実際、オーストリア、フランス、イタリアの各国政府は、すでにこの方法での支援を表明しており、コロナ禍が収束するまでは継続するとしている。
またはオーストリア政府のように、鉄道を健全で持続性のある公共交通機関として維持させるため、国もしくは地方自治体が資金を提供してPSO契約(公共サービス義務契約)を鉄道会社と結ぶという方法も考えられる。
これは乗客の多少にかかわらず、契約によって列車を一定時間ごとに運行させるために地方ローカル線や都市近郊路線に導入された方法で、オーストリアはコロナ禍において、この方法を幹線であるウィーン―ザルツブルク間に導入した。線路使用料減免と併せて取り入れれば、鉄道会社にとって大きな支援となる。
コロナ禍が競争を一変させる?
EUの規制公表は、当然ながらヨーロッパ各国の鉄道会社から歓迎されたが、これはあくまでEUが各国へ、線路使用料の減免を「許可した」だけであり、ここから先の判断は各国政府の判断ということになる。早期の決断を促すため、チェコでは各鉄道会社が手を組んで、政府へ直談判したというわけだ。
昨年から続く環境問題にも関連して、EUは鉄道をその重要なツールとして位置付けており、今回のコロナ禍においても鉄道業界により多くの支援が向けられるよう、後押しすることを表明している。コロナですっかり影を潜めてしまった感じのある環境問題だが、今もそれに取り組む姿勢に大きな変化はない。
ヨーロッパでオープンアクセス法が施行されて以降、ヨーロッパ各国では旧国鉄と新規参入の民間企業各社との間で、熾烈な顧客獲得競争が繰り広げられてきた。しかし、コロナ禍という非常事態が、これまでの勢力争いの図式を一変させる可能性もある。ライバル同士が互いにこの危機から脱するため、手を取り合いながら難局を乗り切り、その先にある「鉄道黄金時代の再来」へと共に歩んでいく方向に舵が切られたのかもしれない。
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