【産業天気図・情報通信】顧客あたり収入の減少続き、費用減でも伸び鈍い。ソフトバンク独走も業界は終始「曇り」
10年4月~9月 | 10年10月~11年3月 |
情報・通信業界は2011年3月まで1年間終始、「曇り」が続きそうだ。販売促進費など費用の削減で利益捻出が可能であるため、各社とも当面増益基調を維持するが、国内市場の成熟化で成長性が鈍化しつつある。
絶好調の業界3位・ソフトバンク<9984>は足元の10年3月期、米アップルの多機能携帯電話「アイフォーン」などの牽引で営業益2割増の見込みだが、来11年3月期も2割近い伸びで営業益5000億円が射程圏。「09年度に獲得した顧客が年間を通して寄与、売上高と利益を牽引している。今後もモバイルを中心に伸ばす」(孫正義社長)。子会社のヤフー<4689>なども堅調が見込めそうだ。
一方、業界首位のNTTドコモ<9437>と2位・KDDI<9433>については、11年3月期も増益を維持する公算ながら、大きな伸びは期待できなさそうだ。累計契約者数は増加が続いているものの、割安な定額制の料金プランが浸透、顧客あたりの音声収入の単価は減少を続けている。2社は音声収入減による粗利減を、販売奨励金や減価償却費などの費用削減で補い営業増益を狙う。
このうちNTTドコモは4月、ソニー・エリクソン製のスマートフォン「エクスペリア」を投入。インターネットなどのデータ通信収入が大きくなる傾向にあるスマートフォンの拡販で、減少を続ける顧客当たり収入に歯止めをかける狙い。
またKDDIは1月末に発表したジュピター・テレコムへの出資を受け、来期業績に不透明感が出ている。TOBルールへの抵触を避けるため当初出資比率を調整するが、最終的に持分法適用会社とする予定。この結果、来期は営業益段階でのれん代の計上と借入金増による利払いが費用として計上されそうだ。KDDIそのものは、今期の固定通信事業の設備減損効果で来期に年150億円の減価償却費減少が見込め、さらに営業外にはジュピターの持分利益が計上できるというプラス要素があるが、それらを加味しても来11年3月期はマイナスのインパクトが先行する可能性もある。
(桑原 幸作)
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