日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく

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シトロン・リサーチが2016年に出したレポート。サイバーダインをこき下ろしている
日本市場に姿を現し始めたアメリカのカラ売りファンド。その実力はいったいどの程度なのか? 実際の事件に基づいて、アメリカ系カラ売りファンドと病院買収グループ、シロアリ駆除会社、商社絵画部の攻防を描いた経済小説『カラ売り屋、日本上陸』を上梓した作家の黒木亮氏がレポートする。

センセーショナルにあおるのが手法

アメリカのカラ売りファンド、シトロン・リサーチが、装着型ロボットを開発するサイバーダインの株(東証1部)を“うんこ”と呼び、強烈な売り推奨レポートを発表したのは2016年8月のことだった。

当時、2000円程度だったサイバーダインの株価は、創業以来続く赤字の影響などから、ほぼ一貫して下がり続け、現在は858円になった。カラ売りは明らかに成功である。

同じ2016年には、アメリカ系のカラ売りファンド、グラウカス・リサーチ(カリフォルニア州)が伊藤忠商事を、マディ・ウォーターズ(同)が日本電産をカラ売りし、話題を呼んだ。

2001年設立のシトロン・リサーチ(画像は同社ホームページ)

シトロン・リサーチは、デトロイト市郊外で生まれたユダヤ人で、ボストンにあるノースイースタン大学を卒業後、強引かつ詐欺的な商品取引会社のセールスマンとして働き、業界団体から制裁を受けたことがあるアンドリュー・レフトが2001年に設立した。

レポートの中で企業を挑発したり、下品な表現で貶めたりすることで知られ、レフト自身は「他社の分析レポートは退屈極まりないので、自分は読者に読みたいと思わせるように書いている」とうそぶいている。

サイバーダインに関しては「うんこ」「核となる技術と製品の成長率は壊滅的」「同社の馬鹿げた株価は、山海嘉之CEOが日本文化におけるロボットの長年の魅力を利用し、宣伝してきた結果」「投資家の無知や日本市場の株式に関する公開情報不足を逆手に取っている企業の実例」などとこき下ろした。

確かにロボット・ブームの中で、サイバーダインが持ち上げられるのが定番化していたので、皆が便乗しつつも抱いていた違和感を上手く捉えた感じはある。期待先行で上昇していた株価にカラ売りファンドが一石を投じた格好だ。

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