いまだ不透明「本当の保育士給与」問題の深刻 「保育の質」に結び付く重要な課題だ
単価が最も高いのは東京23区を指す「100分の20地域」で、最も単価が低いのが「その他地域」(熊本県、大分県、宮崎県など)となる。全体として「その他地域」が約7割を占める。(「公定価格に関するFAQ」p.44参照)
この地域区分は、2015年度から始まった「子ども・子育て支援新制度」の下で使われている。新制度が始まるにあたり、2014年度に行われた「子ども・子育て会議基準検討部会」で新制度下の公定価格のあり方について議論されていた。その資料のなかに、介護などで使われる地域区分1~6級地・その他の区分を参考にした、私立の認可保育所の全職種平均の職員1人当たり給与月額(常勤・非常勤)が掲載されている。
内閣府によれば、当時の資料の給与額は2013年2月の実績(賞与含む)となり、地域区分の級地が最も高い1級地(東京23区)で31万617円(年額で約373万円)、最も低い「その他」が24万8560円(同298万円)だった。
現在の地域区分別の給与実績については、内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査(クロス集計結果・速報)」に、2019年度の常勤保育士の月額賃金(賞与を含む)が掲載されている。東京23区(100分の20地域)で31万7377円(年額381万円)、「その他地域」が28万3075円(同340万円)となる。
処遇改善加算される保育士も増えてきたが…
新制度が始まってから処遇改善加算で月4万円以上の賃金が上乗せされる保育士も増えてきた。新制度前の調査は全職種平均で非常勤も含まれるため単純比較できないものの、東京23区など単価が高いはずの地域の賃金の上昇幅が小さい。
公定価格は基本的には保育士の最低配置基準に沿って人件費が計算されるため、現場の人手を厚くすればその分、1人当たりの賃金が低くなってしまう。内閣府の調査では、86人定員の認可保育園で配置基準どおりなら必要な保育士は11.4人だが、実際には常勤2人と非常勤2.3人を配置基準より多く雇っている。その分、想定した賃金より低くなってもおかしくはない。
だが、保育士不足で「最低配置基準ギリギリだ」という現場の声は大きい。実際、東京都が監査に入ると約半数になんらかの法令・通知違反があり文書指摘を受けるが、文書指摘される内容のトップが保育士の配置違反になっている。2019年度、東京都は認可保育園237カ所を監査し、違反があったのが118カ所。うち52カ所で保育士が適正に配置されていなかった。
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