数学が好きな人だけに見える「楽しすぎる日常」 日常生活の中にある「数学」を見いだすメリット

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ほかにも、ナイチンゲールが医療現場において、統計を活用して当時の医療の常識を変えた、という話もある。患者の死因を分析したとき、院内感染が多いことを突き止め、病院を清潔に保つ改善を行った。結果、死者を大きく減らすことに貢献したのである。

現在でもUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の再建に大きく寄与したマーケターの森岡毅氏は、確率分野の知識を最大限ビジネスに取り入れた現在顧客として来ている属性を正しく整理し、ターゲットごとの戦略を段階的に取り入れ、たった6年で来場者数を2倍にまで伸ばした、という実績がある。

それぞれまったく違う偉業を成し遂げた偉人たちではあるが、さまざまな分野に数学が潜んでいることに気づかされ、数学を学ぶことで多くの可能性が生まれることを示しているエピソードといえるだろう。

今からできること

さて、前情報としていくつかの情報を挙げたのでここで一度整理しておこう。

・数学好きは物事の関連付けが得意
・授業だけでなく、本、友人などさまざまなシーンで数学に触れることで、数学好きになる可能性があがる
・偉人たちのエピソードからも、数学があらゆることに役に立つとわかる

勘がいい読者は、これらの情報をうまく組み合わせて、数学好きになるための方法を作り上げることができたかもしれない。

『笑う数学 ルート4』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

日々の習慣という意味では、日常のあらゆるシチュエーションに数学をひもづけてみる、ということが数学好きになる近道の1つ、さらにいうと数学を活用して生活する人への近道、といってよいだろう。

もちろんそれを1人で実現させることは難しい。ただ、伊能忠敬の話を覚えておけば日本地図を見ると「数学を使って地図を作ったのだ」と想起したり、大砲の話(これを日常でする人は限られているだろうが)が出たら「ナポレオンは数学を使って勝利した」などと思い出したりすることはできるかもしれない。

まずは読者の関心がある分野に潜む数学を考えてみてはいかがだろうか。

もちろんささいなことで構わない。何度か繰り返していくうちに、ふと新しい発見ができるかもしれないからだ。「数学と日常をこじつけて」みて、ぜひ数学への魅力を再発見していただきたい。 

横山 明日希 数学者

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よこやま あすき / Asuki Yokoyama

math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。2012年、早稲田大学大学院修士課程修了(理学修士)。数学応用数理専攻。大学在学中から、数学の楽しさを世の中に伝えるために「数学のお兄さん」として活動を開始し、これまでに全国約200カ所以上で講演やイベントを実施。2017年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにおいてサイエンスアゴラ賞を受賞。著書に『笑う数学』『笑う数学 ルート4』(KADOKAWA)、『文系もハマる数学』(青春出版社)などがある。

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