YouTube、あまりにも圧倒的な稼ぎ方のカラクリ ジャニーズも頼る「20億人経済圏」の全貌

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日本でもYouTubeの勢いは止まらない。同社で最高製品責任者を務めるニール・モーハン氏は昨年の東洋経済の取材に、「日本はグローバルでもトップ5に入る市場だ」と明言。ユーチューバー事務所大手のBitStarの調査によれば、今年10月現在、国内で登録者100万人を超えるチャンネル数は312、10万人以上のチャンネル数は4922と、ともに前年比で約8割伸びている。

芸能人の進出が加速

これまで目立ってきたのは「HIKAKIN」や「はじめしゃちょー」など、チャンネル登録者数で数百万人を超えるような人気ユーチューバーだ。ただ直近では、芸能人の活躍も目立つ。昨年はジャニーズ事務所の人気グループ「嵐」がチャンネルを開設し、今年はコロナ禍で活動が制限された芸能人の進出が相次いだ。YouTubeの仲條亮子・日本代表は、「(芸能人や歌手などから)YouTube活用の戦略について相談を受けることが増えた」と話す。

また、メイクアップやファッション、ゲーム実況、釣り、ゴルフといった趣味性の高いものや、英会話、フィットネス、料理、投資といった学びにフォーカスしたものなど、登録者が数十万人規模のチャンネルがユーチューバーの裾野を広げた。

ユーチューバーと視聴者の関係性が強いのも日本の特徴だ。先述のスーパーチャットの収益における世界トップ10のうち、7つが日本のチャンネルだ。今年3月には、ゲーム実況や音楽活動を行うユーチューバーユニット「M.S.S Project」が1度のライブ配信で約1億2000万円の投げ銭を集めた。

東京・渋谷のグーグルの日本法人社屋近くで建設中の「YouTube Space Tokyo」。ビル1棟に撮影スタジオなどが完備されている(写真:Google)

YouTubeは戦略的に、日本でも動画投稿を増やす取り組みを行う。社内には「音楽」(レコード会社やアーティスト)、「コンテンツパートナー」(メディアやエンターテインメント企業)、「クリエーター」(ユーチューバー)の3つの区分に分け、YouTube活用を支援する専門人材をそろえる。

今後の成長のカギを握るのが、裾野が広いクリエーター層の支援だ。誰でも見られるオンライン教材のほか、一定数以上のチャンネル登録者がいれば専属の担当者をつけたり、選抜過程を経て限定の講座に招待したりする。

こうした支援の拠点が、直営の撮影スタジオ「YouTubeスペース」だ。チャンネル登録者数が1万人以上であれば利用可能。従来はグーグルのオフィス内にあったが、渋谷のグーグル日本法人社屋近くにビル1棟を建設中だ。今夏に予定されていた開業はコロナ禍で延期されたが、大規模投資であることは間違いない。

日本でも世界でも、「世界最大級の動画経済圏」の成長はとどまるところを知らない。

『週刊東洋経済』11月14日号(11月9日発売)の特集は「YouTubeの極意」です。
中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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