「交通不便地に住む高齢者」が多い市ランキング 自治体による高齢者の移動支援の実態を調査

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全国的にバス・タクシー乗務員が不足し人件費も高騰している。交通事業者としては、いくら公共性の高い事業とはいえ、採算の合わない路線や地域にばかり人的資源を投入することはできない。自治体としても財源は限られる。住民の移動ニーズすべてに応えることは不可能だ。

その他、「バス停まで歩けない高齢者も少なくない」(九州地方)、「バスの利用に際し、夏の暑い日には待ち時間における熱中症のリスク、冬は積雪のためバス停まで行くことが困難」(東北地方)といった回答もあり、一筋縄では行かない状況が伺える。

このような課題への対応策として、一般に「ボランティア輸送」と呼ばれる、道路運送法上の許可・登録を要しない輸送が注目されている。

あくまでボランティアなので利用者から対価を受け取ることはできないが、任意の謝礼やガソリン代、通行料など実費の受け取りは可能で、ガソリン代の計算方法も国土交通省から明示された。

2019年6月にはボランティアドライバーを対象とした「移動支援サービス専用自動車保険」が発売されるなど、制度の整備が急ピッチ進められている。

ドライバーの人手不足が浮き彫りに

制度面が着実に整いつつある反面、アンケート調査では「ボランティアの高齢化による不足により移動支援が困難となっている」(関東地方)との回答もあり、ボランティア輸送についてもやはり担い手であるドライバーの人手不足が浮き彫りとなった。

ボランティアとはいえ、地域の足として一定のサービスを維持するには営利にならない範囲でのインセンティブも必要ではないか。

例えば仲介サイトを利用して、自家用車で買い物に行く人と、買い物に行きたい高齢者をマッチングすることができれば、運転者(ボランティア)は自分で負担するはずだったガソリン代を利用者(高齢者)に負担してもらうことができる。金額としてはわずかかもしれないが、ボランティアに対するインセンティブとしては十分だろう。

仲介サイトの運営者などは、運転者(ボランティア)に還流しない措置をとれば、利用者から仲介手数料を受け取ることも禁止されていない。新たなビジネスの種と見ることもできる。

回答自治体の17%にあたる101市区で、ボランティア輸送に対する何らかの支援が行われており、その過半数の61市区でボランティア輸送を行う団体に対する自動車の貸与や各種経費の補助が実施されていた。しかし、ドライバーが確保できなければ自動車や経費も用をなさない。

一部の地域では、ボランティアドライバーに対して、地域加盟店での買い物や住民票交付といった行政手数料に使えるポイントを付与する実証事業も始まっている。自治体による支援も、「やってみようかな」と思わせるような、ボランティアへの意欲を刺激する方向へと目を向ける必要があるだろう。

島 健祐 東洋経済『都市データパック』編集部

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しま けんすけ / Kensuke Shima

2008年公認会計士試験合格。監査法人にて政府系金融機関や非営利団体等に対する保証業務、アドバイザリー業務に従事したのち、2014年東洋経済新報社に入社。経理、財務業務を経て、現在は主に公的統計データの収集・編集と、それら統計データをベースとした刊行物の編集を担当。

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