上位3市は、居住可能な面積に比べて人口が少なく、主に採算面から公共交通が十分に発達しなかった。同時に、地域の中心都市として道路が整備され、モータリゼーションが進行。住宅も郊外へと広がった結果、交通不便な高齢世帯が多くなったと考えられる。瀬戸内海に有人離島を擁することも上位となる要因のひとつだろう。
8位広島市、15位京都市、19位川崎市など、人口が100万人を超える市も上位となった。総世帯数に対する比率では全国平均を下回るが、多くの高齢世帯が交通不便となっている。
人口増加に応じて、中心市街地から離れた丘陵地や高台が宅地として開発されてきたため、駅から遠く、路線バスも入り込めないエリアが少なくないと考えられる。
前述の通り、ランキング上位の自治体では支援を必要とする高齢者も多いと考えられ、すでに各地で住民と行政が一体となった取り組みが進められている。
倉敷市では、公共交通が利用できない交通不便地域の移動手段を確保するため、地域住民が主体となって、設定されたコース(停留所)を決められた時間に運行する「事前予約制の乗り合いタクシー」が運行されている。
市は運営費の一部を補助し、導入のための計画づくりから、運行後の問題点などに対する指導・助言も行う。
高齢者の移動支援の実態
編集部では、各自治体の高齢者の移動に対する支援の現状と課題を把握すべく、2020年3月から4月にかけて全国815市区を対象にアンケート調査を行い594市区から回答を得た。
まず高齢者の移動支援として、回答自治体の65%にあたる389市区でバスやタクシーなど既存の公共交通利用に対して、何らかの助成が行われているか、もしくは実施に向けた検討が行われていた。バス定期券(シルバーパス)や回数券、タクシーチケットの交付または値引き販売が主な内容となっている。
さらに回答自治体の61%にあたる362市区では、自治体と交通事業者が連携したサービスの提供が行われているか、もしくは提供に向けた検討が行われていた。
住民の移動ニーズに応じたルート・ダイヤの設定や自治体負担での増便、デマンド型(事前予約制)のバス、乗り合いタクシーの運行などが主な取り組みとなっている。
以上は既存の公共交通を活用した支援だが、交通事業者によるサービス提供が困難な場合には、登録を受けた市町村やNPO法人などによる自家用車を用いた運送サービス(自家用有償旅客運送)が認められている。今回、回答のあった自治体のうち、53%にあたる312市区で自家用有償旅客運送が実施されていた。
同時に、支援にあたっての課題も明らかとなった。とりわけ人手不足と財源不足は深刻だ。
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