したり顔もいまのうち

キャスター/小倉智昭

 アプローチでスピンがかかり、キュキュッとボールが止まる。そんな寄せを得意とする上級者も、そのうちただの人になってしまう。アマチュアで止まるアプローチができる人の大半は、ウエッジとボールのおかげ。誰も自分の実力だとは思っちゃいない。
 「先輩のボール、バックスピンがかかりましたよ。やっぱり腕の差ですよね」。なんて褒めそやされても、道具やボールが、とは言わず、「ちょっと開いて、ボールの下をスッと切っていけば止まるよ。まあ、君達初心者には無理かもね」と、したり顔だ。

ところが、アマチュアも2024年になったら、スピンのかかりやすい角溝のウエッジが使えなくなる。先輩が偉ぶるのもあと14年の命である。
 08年8月5日、R&A(全英ゴルフ協会)は、ゴルフ用具規則の改定を発表した。(1)溝の容量を制限すること、(2)溝の縁の鋭さを制限すること(ロフト角25度以上のクラブのみ)。
 要は、現在のクラブでは、ラフからと、フェアウエイからのプレーとを比較しても、難易度に明確な差が出ない。そこで、溝の規則を変更することにより、ラフからのプレーに高い技術を要求することによって、ゲームの中でのショットの正確性の重要さを高めることにしたのである。
 ただし、10年1月1日から規則適用になったのはトッププロの競技のみ、14年1月1日からはトップアマとその他のプロで、一般のアマチュアは24年までは、既存のクラブを使用できる。
 つまり、競技会に出なければ5番アイアン以上の番手も、気にしないで使える。そのうち、メーカーが出荷しなくなるため、24年ごろには、古いクラブは淘汰されてしまうからだ。

アプローチで一番スピンのかかるプロは、フィル・ミケルソン。深いラフからのボールでもピタッと止まる。日本のプロの間では、ルール違反のウエッジではないかとの疑問の声があがる程。誰かがキャディバッグの中にあるウエッジを触ってみたら、溝が鋭くて、手を切った、なんていう噂まで流れたくらいだ。ルールにうるさいアメリカのプロが、それを野放しにすることもないとは思うが、ミケルソンには誰も言えないとの説まであったのである。
 そのうち、スピンのかかるアプローチをすると、怪訝な目で見つめられ「あっ! 違反クラブだ」と言われるに違いない。軟らかいボールを角溝のウエッジで打つと、ボールはバックスピンでピタリと止まる。
 「困るんだよな。スピンかけるとボールが傷んでさぁ。また、ささくれちゃったよ。毎ホール、ボールを替えるのはもったいないよな。このボール、お前ならまだ十分使えるからやるヨ」
 そんな自慢はいまのうちですよ、ご同輩。

キャスター/小倉智昭(おぐら・ともあき)
1947年秋田県生まれ。東京12チャンネル(現テレビ東京)アナウンサー出身。76年フリーに。現在は『とくダネ!』(フジテレビ系)や『嵐の宿題くん』(NTV系)、『小倉智昭のラジオサーキット』(ニッポン放送)の司会を務めるなど、幅広く活躍中。
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