たった2割の「できる人」だけが知る発想のコツ 「広告界の異端児」が考えるアイデアの出し方
──三浦さんは、日本のビジネスパーソンはコアアイデアを生み出せる2割とそうでない8割に分離してしていると指摘しています。
三浦:長年クリエイティブの現場で働いてきた実感でいえるのは、コアアイデアを生み出せる人とそうでない人でくっきり分かれます。多くの会社を見てきて、約8割の人がアイデアを生産できず、優秀なビジネスパーソンでも発想や企画力に乏しいという場合が多い。
その要因の1つは、日本の学校教育で、つねにどこかに正解が用意されているABCのどれかを選ぶような訓練ばかりやってきた点にあると思います。著述家の山口周さんが「残念ながら日本で高校までに学ぶすべてのことは、人間よりAIが得意なことだ」と指摘していますが、そのとおりだと思います。
先のカラコンの売り上げを伸ばすという課題でいうなら、10代の女の子たちという市場は見えてるので「じゃあローラとタイアップする? 乃木坂、それとも人気YouTuber?」「アンケート調査したら、いまYouTuberの〇〇が人気だから、彼女にしよう」とABCの中から“正解”を見つけるのが優等生です。
しかし、コアアイデアは、前提を覆して抜本的な変化を導く発想なので、選択肢の中に答えはありません。問題を再設計することから始めなくてはならない。「ちょっと待って、本当にカラコンって10代の子しか望んでないんだっけ? ちゃんと見つめ直してみよう」と、カラコンの本質的価値を考えて、どうやったら抜本的なかたちでマーケットが広がるかを考え抜く。
「あらゆる前提を1回疑い直す癖」をつける
──どうすればそうした思考法が身につくのでしょうか。
三浦:1つの方法は「前提をぶっ壊す」を前提とすること。例えば広告を例にいうなら、クライアントから、「このお茶を予算10億円でテレビCMでお年寄り向けに売ってくれ」と言われたら、「わかりました、じゃあ、どんないいCMにしますか?」ではなく、まず前提を疑ってみる。
予算は本当に10億円でいいのか。プロダクトの広告自体を疑って、お~いお茶は有名でもうこれ以上広告の余地がないから、むしろ伊藤園という企業のことを広告したほうが効果的かもしれない、お茶を飲む文化についての広告をつくったほうが面白いかもしれない。あるいはターゲットは本当にお年寄りでいいのだろうか。若い人や海外の人に売ったほうがもっとよろこばれるかもしれないといった具合に、「あらゆる前提を1回疑い直す癖」をつける。これがコアアイデアを生む肝です。
これは業種を問わず、あらゆる仕事で使えるクリエイティブな思考法の1つです。
──脳がシャッフルされるような思考法ですね。
三浦:もう1つ具体例をご紹介しましょう。集英社の『週刊少年ジャンプ』創刊50周年のキャンペーンで、『ジャンプ展』の広告をする仕事がありました。僕も『ジャンプ』は大好きだったのでよろこんで引き受けたのですが、このときは予算が非常に限られていた。普通に考えたら、『ジャンプ』の裏表紙の告知広告を一生懸命つくるくらいしかやれることがない。
そこで、『ジャンプ展』の広告をつくるという前提をひっくり返して、東京メトロと組んで『ジャンプ』のキャラクターを使わせてあげるから、東京メトロの全部の駅の紹介をするという企画を考えついた。
つまり『ジャンプ展』の広告をつくるのではなく、東京の広告を『ジャンプ』を使ってやるというコアアイデアです。キャラクターを使って各駅を紹介する『ジャンプwith東京メトロスタンプラリー』は、大反響を呼びました。東京メトロにとってもうれしいし、『ジャンプ』にしてみたら無料でいろんな駅に広告を出せる。このように1点突破のコアアイデアがさまざまな現実の困難を乗り越えさせる突破口となります。
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