コロナ禍で売上90%増!台湾で起きた観光革命 地元青年のパワーが観光資源を想像した
「初めて馬祖に来たときとても感動した」と、台湾で起業家の育成や支援を行う公益団体「台北ゆりかご計画」の創設者である顏漏有氏はいう。顏氏は、2019年12月に政府官庁の1つである国家発展委員会の陳美伶主任委員(大臣に相当・当時)と共に馬祖列島の視察に訪れた。
そのとき顏氏は「馬祖は豊かな自然と軍事拠点だったという歴史があり、観光資源が豊富だ。島の若者の大多数がダブルワークをしているという点も興味深い」と感じたという。また当時、台湾の地方創生政策を担っていた陳美伶氏は、馬祖の地元青年のパワーを目の当たりにし、顏氏と共に馬祖の観光のために何かできないかと考え始めていた。
観光資源の統合と新しい観光スタイル作り
転機が訪れたのは、新型コロナウイルスの足音が聞こえ始めた頃だ。顏氏は「新しいウイルスの流行により旅行スタイルが変わるはずだ」と直感した。そこで今後3年間で台湾における新しい旅行スタイルを構築しようと考え、馬祖をその「スタート地点」としたのだ。顏氏は地方創生学の研究者で作家の洪震宇氏を招き、地元青年と共に様々なアイデアを出し合った。そして観光資源の統合、体験型ツアーのプランニングをもって観光革命に臨むことにした。
地元青年は観光革命のキーパーソンだ。地元の発展のために2017年に組織された「馬祖青年発展協会」の理事長・曹雅評氏はこう話す。「以前の馬祖人は地元の文化に誇りを持っていなかった。そのため観光客におもねることしかできなかった。例えば、人に見せられるのは青の涙くらいだと思っていて、求められるまま青の涙を見せていた。その結果、世間の馬祖の印象は『青の涙以外は何もない』になってしまったのだ」。
観光地としての馬祖が抱える問題について、馬祖観光協会の王礼義理事長はこう分析する。「馬祖の宿泊業者の大多数は兼業で、メインの仕事を別に持っている人が多い。その理由として挙げられるのは、馬祖の土地使用に法的な制限があること、観光の繁忙期と閑散期の差が激しいこと、人材の不足などだ。そのため旅行業に投資しようという人は減っている。それが馬祖の観光プランをきめ細やかなものにできない原因なのだ」。
以前、馬祖行きの団体ツアーで価格競争が起こったことがある。そのときは2泊3日のツアーの最低価格が4000台湾ドル(約1万4600円)にまで値下がりした。2020年10月現在、主要都市から馬祖へのツアーは1万台湾ドル~(約3万6500円~)ということを考えると相当な値下がりだったと言えるだろう。
この低価格競争が、深刻な問題を生じさせた。それを、馬祖青年発展協会の曹理事長は「旅行社が低価格路線を取る場合、利益を出すためにホテル代や食事の費用を抑えるか独自ルートを開発するものだ。だが、馬祖の大多数の小さな店は旅行社の値下げ要求に応じることができなかった。そのため観光ルートから外されてしまったのだ」と振り返る。
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