コロナ禍で売上90%増!台湾で起きた観光革命 地元青年のパワーが観光資源を想像した

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この東莒ツアーの責任者である「大浦plus計画」の陳泳翰(ちん・えいかん)氏は、馬祖観光の特性について「馬祖列島の魅力はスローライフ由来のもので、観光客に生活の本質への回帰を味わってもらえるのが特徴だ。そのため受け入れツアー数はそんなに増やせないのだ」と説明する。また陳泳翰氏によると、東莒島を訪れる観光客の9割が島の中心地である大坪村に泊まるのだという。陳泳翰氏は将来的に、ツアー企画を通して観光客に閩東式建築の特色が色濃く出る大浦集落や福正集落の魅力も感じてもらえないかと考えているそうだ。

6月にスタートした馬祖の体験型ツアーの価格は、2泊3日で1万3000台湾ドル(約4万7600円)だ。「台北ゆりかご計画」の顏漏有氏は、ツアーのクオリティ維持のため1回の募集人数は10~15人程度、価格も下げることはないと話す。もしこのラインを崩せば、長期的に見て地元業者は利益を出すことができないのだ。そんな馬祖ツアーのターゲット層は50歳以上の中高年だ。顏氏は「1~2万台湾ドルのツアーでも売れるだろう」と自信をのぞかせた。

「ツアーのモジュール化」で価格とツアー数を維持

顏氏はさらに、将来的にはあらかじめ予定が決まっているパッケージツアーではなく、観光客が複数のアクティビティを自由に組み合わせて旅程を作る「モジュール型ツアー」を進めたいとしている。馬祖ツアーのモジュール化へは2~3年をかけて調整していく予定だ。「ツアーのモジュール化は容易なことではない。しかし、一度構築できれば閑散期の不安が減るはずだ。馬祖の閑散期は9~11月だが、モジュール化ができればこの季節だからこそピッタリの体験旅行を提供することができるのだ」

馬祖ツアーの全旅程で、初の参加団体となった新北市観光旅行局企画科の長章世科長は馬祖の若者が持つ求心力に驚嘆したという。そして「まだツアーの宿泊や食事などの細部は調整が必要だと思うが、全体を見ると国際競争力があるツアーであると言える。さらに今後の企画によっては台湾にいながら海外旅行の風情を楽しめる可能性もある。それを考えると、このツアー価格では安すぎるくらいだ」と絶賛した。

また、台湾を訪れる外国人を対象とした旅行社「MyTaiwanTour(飛亜旅行社)」の呉昭輝執行長は、自ら志願して馬祖列島の視察に訪れ「海と空と大地に囲まれ、ムール貝と酒を楽しむ……これだけでも外国人旅行客を引きつける一大ポイントだ」と話した。呉執行長は馬祖に対し更なる特色ある企画を期待すると共に、同社でも台湾人を対象としたサービス展開を検討し始めたという。

馬祖列島で起きた観光革命では、政府の陳美伶氏が地元青年を集め、その地元青年と地方創生学の専門家である洪震宇氏が協力して観光資源の発掘とストーリー化に臨み、起業支援のプロ・顏漏有氏がビジネスモデル作りをサポートした。こうして「青の涙しかない」と言われていた馬祖に新しい風が吹いたのだ。だが、馬祖列島にはまだ越えなければならないハードルがある。それは交通面と天候だ。

馬祖列島では大型車が不足しており、現状では大型車を丸1日チャーターすることも難しいのだという。天候面を見ると、霧のため空港が閉鎖されることも珍しくない。さらに馬祖青年発展協会の曹理事長は地元の受け入れ能力の調整など課題も多いと話す。コロナ禍を機にトレンドとなった馬祖観光が、今後も成長し続けるかどうかはこれらの弱点をいかに克服するかにかかっていると言えるだろう。

(台湾『今周刊』2020年7月20日)

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