J-REITの信用力は二極化が鮮明、資金調達環境は回復の兆し《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 格付けJ-REITは、長期投資法人債の発行や長期借り入れによって期間が長めの資金を調達しており、有利子負債の平均残存年数はおおむね2~4年の範囲に収まっている。野村不動産レジデンシャル投資法人では平均残存年数が短縮され、短期負債比率が上昇した。これは09年に新規借り入れが少ないなか、リファイナンスを迎えた借入金の比率も08年末時点で全負債の約10%と小さく、他の格付けJ-REITと比べて借り換えの機会が少なかったためであろう。

有利子負債の担保の設定状況を見ると、上場J-REITの約半分に当たる20社が有担保で資金調達を行っている。その大半で有担保負債比率が8割を超えており、財務の柔軟性が制限されている。一方、格付けJ-REITは有利子負債のほとんどが無担保で調達されている状況に変わりはない。

最近のJ-REITのリファイナンス動向に注目すると、既存借入金の条件変更として、1)1カ月単位で返済期限を延長するケース、2)当初、期限一括弁済であった借入金が弁済日前に一部の弁済を求められるケース--が見られた。また、不動産市況の低迷により、賃料収入が減少傾向にあるなか、さらに高い金利スプレッドや多額の融資手数料など、厳しい調達条件で借り換えを迫られているJ-REITでは収益性が大きく低下しており、分配金減少の大きな要因となっている。

一方で、格付けJ-REITの中には、借り入れの長期化とともに一時拡大したスプレッドが縮小するなど、高い信用力が表れているところもあり、J-REIT間の信用力の格差が顕著となっている。

投資法人債の発行再開、市場は回復基調

09年12月末現在の上場J-REITの投資法人債発行残高(短期投資法人債を含む)は5808億円、うち格付けJ-REITの発行残高は3280億円と、約56.5%を占める。これまでは優先投資法人債の発行が主流であったが、09年には、産業ファンド投資法人(格付けなし)、DAオフィス投資法人(格付けなし)など3社が劣後特約付き無担保投資法人債を発行した。

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