J-REITの信用力は二極化が鮮明、資金調達環境は回復の兆し《スタンダード&プアーズの業界展望》
格付けJ-REITの有利子負債総額は約1.6兆円で、上場J-REITの有利子負債総額の約46.7%を占める。そのうち、10年中に返済期限を迎える有利子負債総額は約4285億円、短期負債比率は約26.1%で、長期負債の割合が上場J-REITの平均よりも高い。格付けJ-REITの負債の長期化は2009年に進んでいるが、格付けJ-REITを除いた30社の短期負債比率は約35.6%(08年末)から約43.0%(09年末)へとむしろ上昇しており、借入期間の短期化が進展している。
短期負債比率が高い場合、満期が到来する負債が短期間に集中したり、その返済額が大きかったりすると、金融機関の融資姿勢をはじめ資金調達環境に変化が生じた際に柔軟に対応できず、リファイナンス・リスクが高まることが懸念される。また、満期時期が分散していないと、短い期間に金利が大幅に上昇した場合、高い金利で借り換えを行うことになり、支払利息が増加し、キャッシュフローへの影響も大きくなる。
格付けJ-REITを除いた30社の中には、期間1カ月のローンなど、短期の借り換えしか実施できない状況が続いているところもある。格付けJ-REITが5~10年の長期のローンで負債調達を進めていることと比較すると、相対的な信用力の低さが顕著で、J-REIT間で負債構成の格差が開きつつあることがわかる。ただし、負債の長期化が進むと、金利コストの負担が高まり、利払い余力指標や収益性の低下につながるため、スタンダード&プアーズでは負債の長期化が財務内容に及ぼす影響を総合的に評価している。
格付けJ-REITの有利子負債の平均残存年数は09年12月末時点で約3.1年と、上場J-REITの平均 約2.3年よりも長い。なかでも日本ビルファンド投資法人は、平均残存年数は約4.1年と上場J-REITの中で最も長い(表2)。