アステラス製薬が米社へ敵対的買収、「ホワイトナイト」登場で買収価格がつり上がる可能性も
国内製薬大手のアステラス製薬が、乾坤一擲の敵対的買収に踏み切る。
同社は3月1日、米国の製薬企業OSIファーマシューティカルズ(ニューヨーク州メルビル、米ナスダック上場)に対し、株式公開買い付け(TOB)を行うと発表した。
アステラスが公表した普通株式1株当たり52ドルですべての株式(転換社債含む)を取得した場合、買収総額は約35億ドルになるとしている。OSI社の過去3カ月の終値の平均値に対して53%のプレミアム(株価の上乗せ幅)を付けた形で、買い付け期間は3月2日から3月31日まで。
アステラスにとって、敵対的買収のトライは2度目だ。前回は2009年1月に米CVセラピューティクス社にTOBを仕掛けたが、今回はこの時に表明した買収総額10億ドルに比べてもはるかに上回る金額だ。
CV社買収では、新たに現れた買い手に敗れた。今回も同様に「ホワイトナイト」の出現の可能性が取り沙汰されている。というのも、OSI社の主力薬のがん治療剤「タルセバ」は2009年度の全世界での売上高が12億ドルに達しており、同薬の販売権はスイスのロシュおよび同社子会社のジェネンティックが持っているためだ。
資金力でアステラスをはるかにしのぐロシュがホワイトナイトに登場した場合、買収価格が一気につり上がる可能性も否定できない。その場合、仮に買収に成功したとしても、「高値つかみ」となって業績にマイナス影響を与える可能性もある。
アステラスが製薬企業の買収を急ぐのは、主力薬が米国市場で次々と特許切れになりつつあるという局面にあるためだ。