GoToトラベルの衝撃と「星野リゾート」の現状 「ワーケーション」での連泊利用が増えている

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では、次にGo Toの効果を見てみよう。10月分の客室予約が、どのようなペースで埋まっていったかを示すブッキングカーブを見ると、「星のや京都」は、例年であれば6月末時点で、すでに半数の部屋が埋まっていたところ、今年は20%に届かずにいた。しかし、Go Toに参加した8月後半から一気に予約が進み、10月に入ると昨年の実績を上回る97%に達した。

他方、「星のや東京」は、5月から9月上旬まで20%の予約率から動きがなかったが、東京発着Go Toが予約に加わった9月18日を境に伸び、10月上旬時点では約40%まで上昇した。それでも、昨年実績の90%には遠く及ばず、10月28日時点で集計した10月の稼働率実績は約45%と前述の8月実績を下回った。この数値を見る限り、「星のや東京」におけるGo Toの恩恵は限定的ということになる。

星野リゾート全体の業績を9月ベースで見ると、国内外40施設中、約67%に当たる27施設で昨年レベルを回復している。施設ごとの回復傾向としては、マイクロツーリズム市場をターゲットにしやすい立地にあるリゾート系施設や、宿泊そのものが滞在目的となるディスティネーション型施設の回復は早い。一方で、インバウンドやビジネスユースが消失した東京をはじめとする都市部や、そもそもマイクロツーリズムが成立しづらい離島部などは、引き続き回復に向けた個別の処方箋が必要となる。

こうした傾向は、プリンスホテルにおいてもほぼ同様であり、「軽井沢は、Go Toの影響もあり、11月の予約状況がすでに昨年を上回っている。一方で都内は、現時点の客室稼働率は3割程度に留まっている。また、同じ都内でもザ・プリンス パークタワー東京(芝公園)やザ・プリンス さくらタワー東京(高輪)など、滞在そのものが目的となるアーバンリゾート型の施設は需要の回復が早いが、池袋や新宿など、これまでインバウンドやビジネス中心だったホテルは、回復が遅れている」(プリンスホテル広報)という。

なお、両社の話を聞く中で興味深かったのは、いずれもコロナ下においては自社サイト経由の予約が堅調だという。星野代表は「4~6月は大手エージェントの活動が止まったが、その間も自社サイト経由の予約が淡々と入っている印象だった。一昨年、昨年に比べて、自社サイト経由の予約は確実に増えている」と話し、プリンスホテル広報も「自社サイト経由のご予約だと前日までキャンセル料が発生せず、コロナ感染拡大の状況を注視しながらご予約いただける。前日に予約が入るケースも多い」という。

コロナ期のホテル滞在のあり方

ウィズコロナ期において、各社とも集客に智恵を絞っているが、その基本は、やはり安心・安全という部分に対して真摯に取り組みつつ、そのうえで、それをいかに差別化した形で情報発信できるかということに尽きると思われる。その意味でのベンチマークになりうる施設が、このほど2つオープンしたので紹介したい。

「プリンス スマートイン 恵比寿」。宿泊料は税込1万2500円~(筆者撮影)

1つ目は10月8日に都内の恵比寿にオープンした「プリンス スマートイン 恵比寿」だ。プリンス スマートイン(以下、PSI)は、プリンスホテルが若年層(デジタル世代)顧客の取り込みを狙って立ち上げた新ブランドで、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用し、予約からチェックアウトまでを可能な限りスマートフォンのみで完結させる「シームレスなサービス提供」をコンセプトにしたホテルだ。このコンセプトを形にした結果、人との接触が少なく、ウィズコロナ時代のニューノーマルに適合したホテルになった。

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