菅首相、初の所信表明演説で優先した「実利」 学術会議に言及せず、棒読みで盛り上がりなし
これについて、野党側は「都合の悪いことは隠蔽し、言及しない。非常に悪い点で安倍政権を継承している」(立憲民主)、「学術会議の『が』の字もない、これは本当に異常なこと」(志位和夫共産党委員長)などと酷評した。野党は学術会議の推薦候補6人を任命しなかった理由について、代表質問や予算委審議で究明する方針だ。
これに対し、菅首相は26日夜のNHKニュース番組に出演し、司会者の質問に答える形で「(推薦された会員が)結果的に一部の大学に偏っている」と批判した。さらに、菅首相は「全体として民間や若手、地方の大学の研究者が極端に少ない」と指摘し、東京大学など特定の大学の学者ばかりが推薦されていることへの不満をにじませた。
任命拒否の理由は説明を回避
推薦された6人の任命拒否の理由を問われると、菅首相は「説明できることとできないことがある」と不快そうな表情で説明を避けた。「人事の理由は明らかにすべきではない」との政府の立場を改めて示した格好だ。
今後の国会論戦でも菅首相は同様の対応をとるとみられるが、与党内には「説明を避け続ければ、政権批判が拡大するばかりだ」(公明幹部)と不安視する声も広がる。
そもそも、初演説を終えたばかりの首相が、その日の夜のNHK番組に出演して演説内容を自ら解説するのは「過去に例がない」(関係者)。野党側は「あらかじめ出演を決めておいて、そこで初めて学術会議問題に言及してみせること自体が国会軽視」(立憲民主)との声も噴出している。
関係者は「首相の得意とするメディア対策の一環」と解説するが、先の首相番記者との「パンケーキ懇談会」に象徴されるメディア操縦術は「政府とメディア双方への国民の不信も招きかねない」(自民長老)との指摘も多い。
首相演説を受けて野党側は、11月2日から始まる予定の衆院予算委員会を3日間開催するよう求めた。衆院予算委は首相との直接対決の場となるが、自民党は慣例を盾に2日間を主張して折り合わなかった。官邸事務方トップとして6人の任命拒否を決めたとされる杉田和博官房副長官の予算委参考人招致も、自民党は「あまり前例がない」と拒否する構えだ。
初演説の遅さに加え、臨時国会の会期は41日間と「冒頭解散時を除けば、最近では最も短い」(自民国対)。しかも、政府提出の法案・条約も野党が反対しにくい必要最低限の10本に絞り込まれている。政府与党は予算編成を理由に「会期も延長しない」(自民国対)としており、菅首相の初関門となる今臨時国会も「鉄壁ガースーでしのぎ切る」(官邸筋)狙いが透けて見える。
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