菅首相、初の所信表明演説で優先した「実利」 学術会議に言及せず、棒読みで盛り上がりなし

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「活力ある地方を創る」の項では、「まさにゼロからのスタート」と自らの苦労人伝説をアピールしたうえで、総務相時代に自身が創設したふるさと納税の成果を誇示。併せて持論の「インバウンド拡大」による地方活性化を訴えたが、「言い古された持論を開陳しただけ」(国民民主)との冷ややかな受け止めが大勢だ。

一方、外交・安全保障の政策的優先順位は最下位だった。安倍晋三前政権でまったく進まなかった北朝鮮拉致問題について、「条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意」と表明したのが目立つくらいで、「ほとんどが安倍外交の受け売りの一般論」(閣僚経験者)にとどまった。菅外交の片鱗をうかがわせる部分はほとんどなかった。

学術会議問題には最後まで言及せず

演説の締めくくりでは、自らの目指す社会像として「自助・共助・公助、そして絆」と従来の持論をそのまま披瀝(ひれき)した。憲法改正にも言及したが、「与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的議論につなげることを期待する」と、任期内の実現にこだわり続けた安倍前首相とは対照的に「国会と国民任せの姿勢」(自民幹部)が際立った。

約25分間の首相演説に対し、議場の反応は「従来に比べてもかなり静か」(立憲民主幹部)で、演説の節目ごとに激しいヤジが飛び交う場面もなかった。「ほとんど原稿の棒読みで、首相の滑舌も悪くて聞き取りにくく、時々読み間違いもあった」(同)ことが議場の盛り上がりを欠いた原因とみられる。

臨時国会での与野党攻防の焦点となる日本学術会議会員の任命拒否問題については最後まで言及しなかった。演説最終盤では野党席から「学術会議はどうした」「これで終わり?」などのヤジが飛んだ。しかし、菅首相は意に介さずに淡々と原稿を読み進め、「国民のために働く内閣として新しい時代をつくり上げてまいります」と一段と声を高めて締めくくった。

最近の首相初演説では、小泉純一郎氏の「コメ百俵の精神」や鳩山由紀夫氏の「友愛の政治」などが有名だが、今回の菅演説には「そうした大向こうをうならせる部分」はなく、しかも、政権を揺るがす政治問題となっている学術会議問題にまったく触れなかったのは「極めて異例の対応」(自民国対)と受け止められている。

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