菅首相、初の所信表明演説で優先した「実利」

学術会議に言及せず、棒読みで盛り上がりなし

10月26日午後、衆院本会議で所信表明演説をする菅義偉首相(写真:時事)

10月26日に召集された臨時国会で、菅義偉首相が就任後初の所信表明演説を行った。首相指名から41日目の演説は「近年では異例の遅さ」(国会関係者)だ。

演説の内容を歴代首相と比べると、故事や歴史的名言を引用するような情緒的表現はなく、「理念より実利」という菅政治の特徴が浮き彫りになった。

温室ガスゼロの具体策はこれから

菅首相は演説の中で、ネット上で大炎上して政治問題化している日本学術会議会員の任命拒否問題について一切言及しなかった。「鉄壁ガースー」と呼ばれた官房長官時代からのガードの固さを見せつけた格好だが、野党側は「説明する意思もないのか」(共産党)と反発。28日から始まる各党代表質問で厳しく追及する構えだ。

演説は約7000字と歴代首相と変わらない分量。最初の項目は新型コロナウイルス対策と経済の両立で、まず「国難のさなかに国の舵取りという大変重い責任を担うことになった」と緊張した表情で切り出した。感染の現状について、「状況は予断を許さない。爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守る」と声を張り上げ、経済回復との両立に全力を注ぐと力説した。

菅首相はそのあと、ポストコロナの新たな社会づくりに絡め、「縦割り行政の打破」「行政のデジタル化」などについて具体策を列挙して持論を展開。“3大スガ案件”とも呼ばれる「携帯電話料金引き下げ」「デジタル庁創設」「不妊治療への保険適用」の早期実現への決意を繰り返しアピールした。

一方、菅首相は、国の将来をにらんだ長期目標として、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとすると宣言した。菅首相は3番目の項目となる「グリーン社会の実現」の中で、「菅政権は成長戦略の柱として、脱炭素社会の実現を目指す」と明言。これまでの発想を転換することで、産業構造や経済社会の変革につなげる考えを打ち出した。

メディアのほとんどが「温室ガス2050年ゼロ宣言」を大見出しで伝えるなど、首相演説の最大の目玉となった。ただ、遠大な目標に到達するための具体的工程については、次世代型太陽電池の実用化のための研究開発などを列挙しただけで、「再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進める」などの一般論に終始。「すべてはこれから」(環境省)というのが実態だ。

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地銀 最終局面<br>首相が追い込む崖っぷち

遅々として進まなかった地銀再編。しかし菅義偉首相は明確に踏み込みました。全国の地銀はどう動くのか、現状を徹底取材。今後起こりうる地銀再編を大胆予測。さらにビジネスモデルや行員の働き方にも注目し、地銀が生き残る道について探りました。

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